シーゲル『株式投資の未来』『株式投資』レビュー——大学基金はなぜ株式に張るのか

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著:ジェレミー・シーゲル, 著:瑞穂 のりこ
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ジェレミー・シーゲルの『株式投資の未来』のレビューです。同じ著者の『株式投資』も後半でまとめて紹介します。

当ブログは学校法人の財務・決算を扱っていますが、シーゲルはその文脈でこそ読む価値のある著者だと考えています。世界のトップ大学と早慶の決算比較で見たとおり、米国の大学基金(endowment)は収入の3〜4割を運用益で賄い、その資産構成は株式相当資産に大きく傾いています。「なぜ大学のような超長期の資金は、債券ではなく株式に張るのか」——その理論的なバックボーンが、本書が示す「株式の長期リターンの優位」だからです。

目次

内容まとめ

成長してる企業だからといって、株のリターンが高いとは限らない。逆に市場の期待が高い銘柄ほど、買われて割高となる。それはつまり、時価総額が高くてもリターンが高いとは限らないということ。

これまではシーゲルも、インデックス投資が最も良いと考えていたが、S&P500の組み入れ銘柄が、当初のままだったらもっとリターンが良かったことを発見。

また、増益率が高く、株が買われて市場の期待が高いと、良い業績でも、”市場の期待と比べて”良いか悪いかでみられるため、株価は上がりづらいが、市場からそこまで注目されていない企業であれば、期待も少ないため、少し良い決算を出すと株価が上がる。

株式の長期的なリターンは増益率そのものではなく、実際の増益率と投資家の期待との格差で決まる。(P.46)

高配当株は、株価が下がると配当利回りが上がる。そのため、下がったときにも買い増し、配当金も再投資していくと、株価が回復したときに、リターンが爆上げ。

投資家リターンの基本原則は、株式が配当を生むとき、効果が増幅する。(P.48)

ニューヨークダウのうち高配当10銘柄に投資する「ダウの犬」戦略や、S&P500で高配当10銘柄に投資する「S&P10種」戦略は、過去約50年で、ニューヨークダウや、S&P500よりも成績が良い。

黄金銘柄(コーポレート・エルドラド)に支払う対価はPERで20〜30倍程度で市場平均をわずかに上回るくらい。

技術革新が起きると生産性が高まって、企業の利益が増える、と思うかもしれないが結局周りの企業も同じ仕組みを導入することで、それが業界の標準となり、コスト減が価格に反映されるため、最終的に恩恵を受けるのは消費者である。

シーゲルによると、株式の実質リターンは年率6.5〜7%、インフレ調整後の平均リスクも、保有期間が15年〜20年になると、債券よりも低くなる。

今後、先進国の高齢化、ベビーブーム世代のリタイアで、生活費にするために金融資産が売られるが、買い手がいないと、価格が下がってしまう。そこでグローバルソリューション(世界的解決)として期待できるのは新興国。新興国の発展・生産性向上などにより先進国への輸出が増え、先進国退職者の金融資産の買い手にもなる余地あり。

シーゲルの勧める投資戦略

国際インデックス運用をポートフォリオのコアに、Dividend(配当) International(国際)Valuation(バリュエーション)を意識。

シーゲルが進めるポートフォリオは、以下

インデックスファンド50%
(30%の米国株と20%の非米国株)→VTIやDIA、EFA、EWCなどが勧められている

リターン補完戦略が50%(次の各々10〜15%)
・高配当戦略(ダウの犬や、REIT(IYR、RWR)など)
・グローバル戦略(多国籍企業への分散、S&Pグローバル100(IOO)など)
・セクター戦略(石油および天然資源、医薬品、有名ブランドの生活必需品など)
・バリュー戦略(低PER、生き残り上位、バークシャー・ハサウェイなど)

となっている。

感想

シーゲルが、当初S&Pで試算した結果には一つ気をつけなければならない点があると思います。それは、S&P構成銘柄が入れ替わったからこその結果でもあるということです。(当たり前のこと言ってますね苦笑)

新興企業が大幅に業績を拡大したからS&Pに組み入れられたのですが、もし組み入れ銘柄が変わらなかったとしたら、当初の構成銘柄はここまで良いリターンとなったかはわかりませんよね。

つまり、増益率が高く、短期的に大多数の投資家がむらがる銘柄があってこその、戦略なのではないかな、と思いました。

そういった意味で、本書序文の「いつか市場参加者の多くが真似をしたら」というシーゲルの指導教官(ポール・サミュエルソン)の言葉もあるのではないでしょうか。

連続増配している高配当株というのは、経営者の姿勢が出ていますし、配当が株価の下支えとなるので、その点優れていると感じました。

ただ、この本は2005年初版なので、もう15年程経っています。連続増配などは、今一度確かめた方がよいでしょう。

あと、今回読んで意外だったのでは、シーゲルも結局はポートフォリオの半分はインデックス投資を勧めていて、残り半分の補完戦略で高配当の銘柄やETFを勧めています。一部のブロガーが「シーゲル流投資は、高配当の個別株だ!」というのはちょっと違いますね。
(もし、シーゲルが他の著書でそういう主張をしているのかは知りませんが)

巷で言われていることに惑わされないよう、元の本を読んでみると面白い発見があります。原著をあたるだけの英語は私にはありませんが、日本語訳が出ている場合は読んでみましょう。

同じ著者の『株式投資』も読みました

シーゲルの考えをさらに理解したくて、『株式投資(Stocks for the Long Run)』も読みました。初版の時系列では『株式投資』が先ですが、こちらには具体的な推奨銘柄はなく、株式の歴史・税制・評価方法・景気循環などが体系的に書かれています。内容の核は『株式投資の未来』と重なります——インフレとリターンの観点で債券より株式、国際分散、長期では為替ヘッジの効果は小さい、そして「市場(インデックス)に勝つのは難しい」。行動ファイナンスの章(投資カウンセラーと投資家デイブの対話)は、軸がぶれがちな投資家(私も)にこそ刺さる内容でした。

2冊を読み終えての結論はシンプルで、インデックスETFをポートフォリオの中心に置き、高配当や配当貴族はあくまで補完戦略、というものです。

私学財務の目で読むシーゲル

本書の「株式の実質リターンは年率6.5〜7%で、15〜20年保有すればリスクは債券より低くなる」という主張は、個人投資家向けの話にとどまりません。ハーバードやイェールの基金が資産の大半を株式的リスクに張るのも、日本の10兆円大学ファンドがレファレンス・ポートフォリオを株式65:債券35で設計したのも、根っこにあるのはこの「超長期の資金なら株式の優位が効く」という考え方です。一方で、シーゲル自身が「インデックスに勝つのは難しい」と認めている点は、大学基金の高コストなオルタナティブ運用がシンプルな株式インデックスに劣後しているという近年の批判とも響き合います。永続資本の運用を考える人にとって、シーゲルは出発点になる著者です。イェール・モデルの中身とその批判はイェール・モデルとは何かで詳しく扱っています。

著:ジェレミー・シーゲル, 著:瑞穂 のりこ
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株式投資やインデックス投資をするならまずは実際に証券口座を開いてやってみましょう。

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この記事を書いた人

学校法人の財務・経理に10年以上従事。予算・決算、資金運用、学費を担当。各法人が公開している計算書類・事業報告書をもとに、私学の財務を分析しています。

資格:日商簿記2級、FP2級、TOEIC L&R 920点
投資:インデックス投資中心に10年以上(投資信託・米国株・暗号資産)

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