【改正私立学校法】計算書類・財産目録等の公表義務と備置き・閲覧の実務

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6月末に所轄庁への計算書類の提出を終えて、ひと息ついている頃かと思います。ただ、改正私立学校法のもとでは、提出が終わってからも「公表」「備置き」「閲覧対応」という宿題が残っています。本記事では、学校法人の経理部・財務部向けに、令和7(2025)年度決算から適用される計算書類・財産目録等の公表・備置き・閲覧のルールを、根拠条文とともに整理します。

所轄庁への「提出」は私立学校振興助成法に基づく手続、「公表・備置き・閲覧」は私立学校法に基づく義務で、それぞれ別のルールです。提出したから公表も済んだ、とはなりません。

目次

結論の早見表

先に結論をまとめます。自分の法人がどちらの区分かで、公表のルールが大きく変わります。

項目 大臣所轄学校法人等以外 大臣所轄学校法人等
公表 努力義務(法第137条) 義務(法第151条・遅滞なく)
公表の方法 インターネットの利用その他の方法 インターネットに限定(施行規則第55条)
公表する書類 寄附行為・計算書類等・監査報告・財産目録等(施行規則第49条) 同左
備置き 主たる事務所5年・従たる事務所(写し)3年(法第106条・第107条) 同左
閲覧を請求できる人 債権者・在学生などの利害関係人 何人も(法第149条)

「大臣所轄学校法人等」は、大学・高等専門学校を設置する法人(文部科学大臣所轄)のほか、知事所轄でも事業の規模・区域が政令の基準に該当する法人を含みます(法第143条)。

関係法令の整理

法令 該当条文 内容
私立学校法(令和5年法律第21号による改正・令和7年4月1日施行) 第103条 計算書類等の作成・保存
第106条 計算書類等・監査報告の備置き・閲覧
第107条 財産目録等の作成・備置き・閲覧
第137条 情報の公表(努力義務)
第143条・第149条・第151条 大臣所轄学校法人等の定義と特例(閲覧・公表義務)
私立学校法施行規則 第49条・第55条 公表する書類の範囲・公表方法

改正私立学校法の全体像は私立学校法の改正まとめで、新しい学校法人会計基準は改正学校法人会計基準のポイントで解説していますので、合わせてご覧ください。

そもそも「計算書類等」「財産目録等」とは

条文上の用語の範囲を押さえておくと、以降の整理がすっきりします。

計算書類等(法第103条第2項)

  • 計算書類:貸借対照表・収支計算書
  • 事業報告書
  • これらの附属明細書

毎会計年度終了後3月以内(3月末決算なら6月末まで)に作成します。計算書類とその附属明細書は、作成から10年間の保存義務があります(同条第4項)。

財産目録等(法第107条第1項)

  • 財産目録
  • 役員及び評議員の氏名・住所を記載した名簿
  • 報酬等の支給の基準を記載した書類

こちらも毎会計年度終了後3月以内に作成します。財産目録そのものの記載方法・様式(第八号様式)は学校法人の財産目録の作り方で解説していますので、合わせてご覧ください。

公表のルール

大臣所轄学校法人等以外:努力義務(法第137条)

学校法人は、次の事項をインターネットの利用その他の方法により公表するよう努めなければならないとされています。

  1. 寄附行為の内容
  2. 計算書類等、監査報告(会計監査人設置法人は会計監査報告を含む)、財産目録等のうち文部科学省令で定めるものの内容

「文部科学省令で定めるもの」は施行規則第49条で次のとおり定められています。

公表する書類 注意点
計算書類等 貸借対照表・収支計算書・事業報告書・附属明細書
監査報告 会計監査人設置法人は会計監査報告を含む
財産目録等 役員・評議員名簿のうち個人の住所部分は除く

大臣所轄学校法人等:公表義務(法第151条)

大臣所轄学校法人等は努力義務ではなく、計算書類等・監査報告・会計監査報告・財産目録等を作成した場合、遅滞なく公表しなければなりません。公表の方法はインターネットの利用に限定されています(施行規則第55条第1項)。公表する書類の範囲は知事所轄の場合と同じく施行規則第49条によります(同条第2項)。

「遅滞なく」なので、決算・監査・定時評議員会が終わった今の時期(7月)が、まさにWebサイト掲載の作業タイミングです。前年度分のPDFを差し替えたまま放置していないか、確認しておきましょう。

備置きと閲覧対応のルール

公表と別に、事務所への「備置き」と、請求があったときの「閲覧対応」の義務があります。

備置きの期間と場所

書類 主たる事務所 従たる事務所(写し) 起算日
計算書類等・監査報告(法第106条) 5年間 3年間 定時評議員会の日の1週間前の日
財産目録等(法第107条) 5年間 3年間 定時評議員会の日

従たる事務所については、電磁的記録で作成し、省令で定める措置(従たる事務所で閲覧等の請求に応じられる措置)をとっていれば、写しの備置きは不要です。

誰から閲覧請求されるか

  • 計算書類等・監査報告(法第106条第3項・第4項):債権者は謄本・抄本の交付請求まで可能。在学生などの債権者以外の利害関係人も閲覧請求ができ、法人は正当な理由がある場合を除き拒めません
  • 財産目録等(法第107条第5項):在学生などの利害関係人が閲覧請求でき、同じく正当な理由なく拒めません。
  • 大臣所轄学校法人等の特例(法第149条):閲覧請求できる人が「何人も」に広がります。利害関係の有無を問わず、誰から請求されても対応が必要です。

役員・評議員名簿の閲覧請求には、個人の住所部分を除外して閲覧させることができます(法第107条第6項)。窓口対応のマニュアルに落とし込んでおくと安心です。

実務チェックリスト(3月末決算の場合)

決算から公表までの流れを時系列で整理すると、次のようになります。

  1. 〜6月末:計算書類等・財産目録等を作成(法第103条・第107条:会計年度終了後3月以内)
  2. 定時評議員会の1週間前〜:計算書類等・監査報告を主たる事務所に備置き開始(法第106条)
  3. 定時評議員会の日〜:財産目録等を主たる事務所に備置き開始(法第107条)
  4. 定時評議員会後、遅滞なく:大臣所轄学校法人等はWebサイトで公表(法第151条)。それ以外の法人も公表に努める(法第137条)
  5. 通年:閲覧請求への対応体制(窓口・費用・名簿の住所除外)を整備

おわりに

改正私立学校法では、学校法人会計の目的が「補助金の適正配分」から「ステークホルダーへの情報開示」へと再整理されました。公表・備置き・閲覧はその中核となる制度です。特に大臣所轄学校法人等はインターネット公表が法律上の義務になっているので、決算業務の締めくくりとしてWebサイトの掲載状況まで確認しておきましょう。

所轄庁(都道府県私学担当課)から公表・提出について個別の案内が出ている場合は、そちらが優先です。不明な点は所轄庁・顧問の公認会計士にご相談ください。

※本記事は令和7年4月1日施行の改正私立学校法・私立学校法施行規則(いずれもe-Gov法令検索の現行条文)に基づき作成しています。

計算書類の提出(とじ込み順序)については別記事で解説していますので、合わせてご覧ください。

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この記事を書いた人

経理・財務が10年以上の大学職員です。

資格:簿記2級、FP2級、TOEIC L&R 920点
投資年数:10年以上
投資対象:投資信託(主にインデックス投資)、暗号資産、米国株

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