令和7(2025)年度から適用された新しい学校法人会計基準で、計算書類の注記事項に「セグメント情報」が新設されました。初めての決算で「区分をどう設定するのか」「共通経費はどう按分するのか」に悩んだ担当者の方も多いと思います。本記事では、学校法人の経理部・財務部向けに、セグメント情報の注記の書き方を根拠資料とともに整理します。
結論の早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 学校法人会計基準 第40条第1項第8号(計算書類の注記事項) |
| 詳細を定める資料 | 文科省通知 6高私参第27号(令和7年3月27日)「第二 セグメント情報について」 |
| 誰が注記するか | 全ての学校法人(第48〜50条の特例に注記の免除はなし) |
| 共通で設定する区分 | 大学/短期大学/高等専門学校/それ以外の学校等/病院/その他 の6区分 |
| 表示する科目 | 事業活動収支計算書ベースの9科目(教育活動収入計〜当年度収支差額) |
| 配分基準の適用 | 令和9年度から。令和7・8年度は従来方式(昭和55年通知)でも可(経過措置) |
なお、注記したセグメント情報を含む計算書類の公表は、大臣所轄学校法人等(知事所轄でも政令基準に該当する法人を含みます)では義務、それ以外の法人では努力義務です。公表のルールは計算書類・財産目録等の公表義務と備置き・閲覧の実務で解説しています。
根拠資料の整理
| 資料 | 位置づけ |
|---|---|
| 学校法人会計基準 第40条第1項第8号 | 「セグメント(学校法人を構成する一定の単位をいう。)情報」を注記事項として規定 |
| 6高私参第27号(令和7年3月27日)「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成等について(通知)」 | 「第二 セグメント情報について」で区分の設定・配分基準・表示科目を規定。別添1に配分基準の例、別添2に注記事項記載例 |
| 学校法人会計基準等に関するQ&A | セグメント関連の実務質問(開示義務・法人部門の範囲・按分の留意点など)への文科省回答 |
基準の条文上の定義は「セグメント(学校法人を構成する一定の単位をいう。)情報」の一行だけで、実務の中身はほぼすべて通知側にあります。手元に通知のPDFを置いて読み進めるのがおすすめです。
セグメント区分の設定
全法人共通の6区分
通知(第二の2)では、各学校法人の業務内容等に応じて適切にセグメントを設定したうえで、次の6区分は全ての学校法人で共通に設定することとされています。
| 区分 | 設定の単位 |
|---|---|
| ① 大学 | 複数設置している場合は学校ごと |
| ② 短期大学 | 同上 |
| ③ 高等専門学校 | 同上 |
| ④ ①〜③以外の学校・専修学校・各種学校 | 複数でも1つに集約可 |
| ⑤ 病院 | 複数でも1つに集約可(学生の健康管理・福利厚生目的の診療所は除く)。※常に独立セグメントになるとは限らない——医学部・歯学部と一体の附属病院は「大学」の内数として表示(後述) |
| ⑥ その他 | 学校法人部門、病院以外の附属施設、保育所など①〜⑤に該当しない部門 |
あわせて、各セグメントに含まれる部門の名称を注記することとされています。
「その他」と学校法人部門
「その他」の中身が学校法人部門のみの場合は、セグメントの名称を「その他」に代えて「学校法人部門」とすることができます。学校法人部門の業務の範囲は通知(第二の2(7))に9項目で定められており、理事会・評議員会の運営、役員等の活動、登記・認可等の法令手続、法人主催の事業・会議、法人運営の基本方針の策定などが挙げられています。
追加のセグメントも設定できる
6区分はあくまで最低限の共通枠です。通知では、改正私立学校法における財務報告の趣旨に鑑み、各学校法人が適切と考えるセグメントを追加して積極的に表示することが望まれるとされています。
医学部・附属病院がある場合
医学部・歯学部の教職員が、教育研究活動と一体的に診療業務を行う附属病院の業務を兼務する場合は、医学部・歯学部と当該附属病院を一括したセグメント「うち、医学部等及び附属病院」を設け、セグメント「大学」の内数として表示します。含まれる学部・附属病院の名称の注記も必要です。
医学部・歯学部を設置していない大学・短期大学が、学部・学科の教育研究活動と一体的に診療活動を行う病院を有する場合も、これに準じて「うち、(何)学部等及び病院」を内数表示します。
表示する科目は9つ
セグメントごとに表示すべき事業活動収支計算書の科目は、次の9つです(通知 第二の4)。
- 教育活動収入計
- 教育活動支出計
- 教育活動収支差額
- 教育活動外収支差額
- 経常収支差額
- 特別収支差額
- 基本金組入前当年度収支差額
- 基本金組入額合計
- 当年度収支差額
イメージとしては、次のような表になります(科目×セグメントのマトリクス。様式の詳細は通知の別添2「注記事項記載例」を参照してください)。
| 科目 | 大学 | 高等学校 | その他 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 教育活動収入計 | ×× | ×× | ×× | ×× |
| 教育活動支出計 | ×× | ×× | ×× | ×× |
| 教育活動収支差額 | ×× | ×× | ×× | ×× |
| (以下、経常収支差額〜当年度収支差額まで同様) |
共通収入・支出の配分基準
基本の考え方
- 特定のセグメントのものとして把握できる収入・支出は、そのセグメントへ直接計上
- 複数のセグメントに共通する収入・支出は、経済の実態を適切に表す配分基準により配分。在籍者数・職員数・使用時間・面積等を用いて合理的に設定します(通知の別添1「共通収支の配分基準の例」参照)。いたずらに計算が複雑にならないよう留意すること、とも明記されています
兼務教職員の人件費に注意
按分で特に注意が必要なのが、複数セグメントの業務を兼務する教職員の人件費です。従来の発令基準(どの部門の教職員として発令されているかで計上する昭和55年通知の取扱い)による計上は、それが経済の実態を表していると合理的に説明できる場合に限られます。説明できない場合は、業務に従事する時間や兼務割合等、勤務実態を反映した配分基準で各セグメントに配分します。
ただし、発令の内容により人件費が明確に区分されている場合(大学の教職員が法人部門の役員を兼務し、それぞれの人件費が発令で区分されているケースなど)は、その区分どおり各セグメントに計上できます。
経過措置と省略できるケース
配分基準の適用は令和9年度から
通知(第二の5)によれば、配分基準は令和9年度の計算書類の作成から適用されます。令和7年度・令和8年度は、配分基準または昭和55年通知に記載の方法のいずれかを適用し、どちらを適用したかを注記します。また、この2年間はセグメントの設定について、①大学・②短期大学・③高等専門学校・⑤病院を集約して1つのセグメントとすることもできます。
表示を省略できる法人
設定すべきセグメントが「その他」以外に1つのみの学校法人(単一の学校のみを設置する法人など)は、その旨を注記した上でセグメント情報の表示を省略できます。なお、医学部等及び附属病院の内数セグメントがある場合は1つとはカウントされず、省略には該当しないと考えられる旨がQ&Aで示されています。
継続性への配慮
セグメントの設定や配分基準は継続性に配慮し、変更した場合はその旨・変更の理由・セグメント情報に与えている影響を記載します(影響が軽微な場合は省略可)。
おわりに
セグメント情報は、改正私立学校法が目指す財務情報の開示の充実を体現する新しい注記です。最初の設定(区分・配分基準)が今後の継続性の起点になるので、令和7・8年度の経過措置期間のうちに、令和9年度からの本格適用(配分基準ベース)を見据えた設計をしておくことをおすすめします。実際に15法人がどう書いたか(区分の切り方・配分方法・医学部の扱い)はセグメント情報の記載例──私大15法人を横断比較で確認できます。
注記事項は全部で15項目あります。全体像は計算書類の注記事項チェックリストで整理していますので、合わせてご覧ください。
※本記事は学校法人会計基準(e-Gov現行条文)、6高私参第27号通知(令和7年3月27日)および文部科学省「学校法人会計基準等に関するQ&A」(2026年3月更新版)に基づき作成しています。
改正会計基準の全体像は以下で解説していますので、合わせてご覧ください。

学校法人会計・大学財務に関する当ブログの記事は、テーマ別のガイドページに整理していますので、合わせてご覧ください。

