令和7(2025)年度から適用された新しい学校法人会計基準では、計算書類の注記事項が第40条に15項目として整理されました。決算のたびに「注記に何をどこまで書くか」を確認するのは意外と手間なので、本記事では学校法人の経理部・財務部向けに、15項目をチェックリスト形式で整理します。
根拠資料
| 資料 | 位置づけ |
|---|---|
| 学校法人会計基準 第40条 | 「計算書類には、次に掲げる事項を注記しなければならない」として15項目を列挙 |
| 6高私参第27号(令和7年3月27日)「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成等について(通知)」 | 引当金(第一)・セグメント(第二)・子法人(第三)・その他の留意事項(第四)を規定。別添2に注記事項記載例 |
| 学校法人会計基準等に関するQ&A | 実務質問への文科省回答(随時更新) |
新基準では注記事項は計算書類の構成要素として明確化されています。計算書類全体の体系ととじ込み順序は計算書類のとじ込み順序で解説しています。
15項目チェックリスト(第40条第1項)
| 号 | 注記事項 | チェックポイント |
|---|---|---|
| 1 | 引当金の計上基準その他の計算書類の作成に関する重要な会計方針 | 引当金の規定が明文化されたことに対応(通知 第一) |
| 2 | 重要な会計方針の変更(旨・理由・変更による増減額) | 「増減額」まで記載が必要 |
| 3 | 減価償却累計額を直接控除した場合の累計額の合計額 | 直接控除方式の場合のみ |
| 4 | 徴収不能引当金を直接控除した場合の引当金の合計額 | 同上 |
| 5 | 担保に供されている資産の種類及び額 | 借入金の担保等 |
| 6 | 翌年度以後に基本金への組入れを行うこととなる金額 | 未組入額の開示 |
| 7 | 第4号基本金相当の資金を有していない場合の旨と対策 | 恒常的に保持すべき資金(第13条第1項第4号)との対応 |
| 8 | セグメント情報 | 新設。区分・配分基準・9科目の表示(通知 第二) |
| 9 | 重要な偶発債務 | 平成17年・平成25年通知を踏まえる(通知 第四) |
| 10 | 子法人に関する事項 | 新設。概要・取引の関連図・取引状況・保証債務(通知 第三) |
| 11 | 学校法人の出資による会社に係る事項 | 平成17年・平成25年通知を踏まえる |
| 12 | 関連当事者との取引の内容に関する事項 | 同上 |
| 13 | 学校法人間の財務取引 | 同上 |
| 14 | 重要な後発事象 | 決算日後〜計算書類作成までの重要事象 |
| 15 | その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項 | 例示は下記参照 |
新設・変更点で特に注意する項目
1号・2号:会計方針と引当金
新基準では引当金の計上について明文の規定が設けられました(第11条第2項関係)。発生の可能性が高く金額を合理的に見積もることができる将来の特定の支出は、当該年度の事業活動支出として引当金に繰り入れます。通知(第一)では、令和7年度の期首時点で発生している引当金を計上する場合、繰入額を特別収支の「(何)引当金特別繰入額」などの小科目で処理できる経過的な取扱いも示されています。
会計方針を変更した場合の注記(2号)は、その旨・理由・変更による増減額の3点セットです。
8号:セグメント情報
新基準の目玉です。区分は共通の6区分(大学・短期大学・高等専門学校・それ以外の学校等・病院・その他)のうち自法人に該当するものを設定し(追加区分も可)、セグメントごとに9科目を表示します。区分の設定・配分基準・経過措置の詳細はセグメント情報の注記の書き方にまとめましたので、そちらをご覧ください。
10号:子法人に関する事項
こちらも新設です。私立学校法施行規則第11条に規定する子法人がある場合に、(1)子法人の概要、(2)学校法人と子法人の取引の関連図、(3)子法人との取引の状況、(4)子法人の債務に係る保証債務を記載します(通知 第三)。
実務をやっている筆者からすると、記載の仕方について文科省の例が不十分であったと言わざるを得ません。
そのため会計監査人とも「この点記載すべきでは?」「いや法令や文科省の例では書かれていないから不要だ」とかなり議論し、非常に手間がかかりました。
15号:その他必要な事項の例示
通知(第四の2)では、平成17年通知を踏まえた例示として、重要性がある場合に記載すべきものとして次が挙げられています。
- 有価証券の時価情報
- デリバティブ取引
- 主な外貨建資産・負債
- 通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っている所有権移転外ファイナンス・リース取引
- 純額で表示した補助活動に係る収支
資産運用を行っている法人では、有価証券の時価情報の注記が決算書の読み手(評議員・理事・金融機関など)から最も見られる部分のひとつです。
なお、この有価証券の時価情報は、令和8年7月22日付の文科省通知(8高私参第8号)により、令和8年度決算から明細表の記載が細分化されます(債券・株式・投資信託・その他の4区分から、仕組債・プライベートエクイティなどを含む11区分へ)。変更点と実務対応は別記事(「有価証券の時価情報」の注記が細分化:令和8年度決算からの変更点)で解説しています。
実務の進め方
- 決算前:上の15項目を「自法人に該当するか」で仕分けする(該当しない項目を消し込む)
- 記載時:通知の別添2「注記事項記載例」の様式に合わせて書く。9号・11〜13号は平成17年・平成25年通知の記載方法を踏まえる(通知 第四の1)
- 決算後:注記を含む計算書類は備置き・閲覧・公表の対象になる。公表のルールは計算書類・財産目録等の公表義務を参照
おわりに
注記事項は「決められた15項目を粛々と書く」だけのようでいて、セグメント情報(8号)と子法人(10号)という新設項目が加わったことで、令和7年度決算からは実質的に作業量が増えています。筆者の勤務校でも会計監査人からかなりいろいろ確認をされ、記載の方法について議論しました。令和7(2025)年度決算が初回だったからという点はありますが、早めに準備すると決算期に慌てなくて良いと思います。なお、この15項目の照合作業に生成AIを使う方法を生成AIで計算書類をセルフチェックする方法で紹介しています。
※本記事は学校法人会計基準(e-Gov現行条文)、6高私参第27号通知(令和7年3月27日)および文部科学省「学校法人会計基準等に関するQ&A」(2026年3月更新版)に基づき作成しています。
改正会計基準の全体像・セグメント情報の詳細は以下で解説していますので、合わせてご覧ください。


学校法人会計・大学財務に関する当ブログの記事は、テーマ別のガイドページに整理していますので、合わせてご覧ください。

