日本私立学校振興・共済事業団(以下、私学事業団)が2026年8月4日、令和8(2026)年度 私立大学・短期大学等入学志願動向を公表しました。
もっとも目を引いたのは、入学定員充足率が100%未満の大学が41校減って275校になったという数字です。私立大学全体に占める割合も53.2%から46.2%へ下がり、定員割れ校が過半数を割りました。
「定員割れは年々増えていく」という前提で見ていると、逆方向の数字です。この記事では、何が起きたのかを資料の数字から確認し、学校法人の財務にとって何を意味するのかを整理します。
前提:18歳人口はこれから大きく減る
数字を読む前に、前提を確認しておきます。文部科学省の進学率・進学者数推計結果によれば、18歳人口は2021年の114万人から、2040年には74万人まで減る見通しです。

特に2035年から2040年にかけての5年間で22.5万人減るという落ち込みが目を引きます。同じ推計では、現在の入学定員の規模が維持された場合の定員充足率を、2035年93.38%・2040年72.75%と試算しています。
なお、より長い期間の推移は文部科学省の関係データ集にまとめられています。18歳人口はピークの昭和41年に約249万人、第二次ベビーブーム期の平成4年前後に約205万人あり、令和5年には110万人まで減りました。進学率や高校卒業者数などを重ねた図も同資料に掲載されています。
つまり、これから見ていく令和8年度の数字は、こうした長期の減少局面の中での1年分ということになります。
大学全体の数字
令和8年度と前年度の比較です。基準日は5月1日で、令和8年度の数値は速報値です(次年度の資料で確定数になります。前年度の数値は今回の資料で確定しました)。
集計されているのは595校です。調査対象校は613校で、そこから通信教育部のみを設置する学校と募集を停止している学校を除いた数が集計学校数になります。なお株式会社が設置する学校は、調査対象から外れています。
| 項目 | 令和7年度 | 令和8年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 集計 学校数 |
594校 | 595校 | +1校 |
| 入学定員 | 502,752人 | 500,579人 | △2,173人(△0.4%) |
| 志願者数 | 3,956,823人 | 4,317,128人 | +360,305人(+9.1%) |
| 合格者数 | 1,465,690人 | 1,430,399人 | △35,291人(△2.4%) |
| 入学者数 | 510,836人 | 514,277人 | +3,441人(+0.7%) |
| 合格率 | 38.77% | 34.70% | △4.07ポイント |
| 入学定員 充足率 |
101.61% | 102.74% | +1.13ポイント |
| 定員割れ校 | 316校(53.2%) | 275校(46.2%) | △41校 |
充足率が上がった要因は、分子と分母の両方にあります。入学者数が3,441人増えた一方で、入学定員も2,173人減っています。入学者が増えたことと、定員を絞ったことの両方が効いた結果です。
志願者数は9.1%増:実人数とは区別して読む
この年度で特徴的なのは、志願者数が36万人(9.1%)増えたことです。受験者数も34万人(9.0%)増えています。一方で18歳人口は、私学事業団の資料によれば前年度比で2千人の増加にとどまります。
ここで押さえておきたいのは、この志願者数が各大学の報告値を積み上げた集計値だという点です。1人が5大学に出願すれば5とカウントされるため、個人単位で重複を除いた受験生の実人数ではありません。本資料には個人単位の受験者数や1人あたりの出願校数のデータがないため、増加の内訳(出願者の実人数が増えたのか、1人あたりの出願校数が増えたのか)は、この資料からは分かりません。
志願者数は平成4年度の水準に近づいた
この資料には平成元年度からの推移表が載っています。志願者数がもっとも多かったのは平成4年度の4,425,506人で、このときの合格率は19.67%、入学定員充足率は117.69%でした。その後、平成11年度には志願者数が2,983,483人まで落ち込み、令和3年度3,834,860人、令和6年度3,704,472人と推移しています。
令和8年度の志願者数4,317,128人は、推移表の中で最多だった平成4年度(4,425,506人)の97.6%にあたります。一方で18歳人口は、文部科学省の関係データ集によれば、平成4年前後の約205万人から令和5年には110万人へと、ほぼ半分になっています。
18歳人口が半減しても、集計上の志願者数はほぼ同水準に戻っている、という対比です。同時に合格率は19.67%から34.70%へ上がっており、受験生から見た入りやすさは当時と大きく異なります。
充足率が100%を割ったのは令和3年度から
推移表からもう一点読めるのは、平成元年度以降の推移では、私立大学全体の充足率が100%を割ったのは令和3年度が最初だという事実です(この資料の推移表は平成元年度から始まっています)。

平成元年度は124.75%、平成30年度でも102.64%と、長らく100%を超えていました。令和3年度に99.81%と初めて100%を割り、令和4年度は100.85%といったん戻したものの、令和5年度99.59%・令和6年度98.19%と再び下回っています。そこから令和7年度101.61%、令和8年度102.74%と、直近2年は回復局面にあります。
令和8年度は、入学定員600人以上の全区分が100%超
全体が改善していても、内訳は一様ではありません。入学定員の規模別に見た充足率です。
| 入学定員 | 令和7年度 | 令和8年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 100人未満 | 79.74% | 83.72% | +3.98pt |
| 100〜 199人 |
86.90% | 89.26% | +2.36pt |
| 200〜 299人 |
86.75% | 92.48% | +5.73pt |
| 300〜 399人 |
91.00% | 98.45% | +7.45pt |
| 400〜 499人 |
90.37% | 93.93% | +3.56pt |
| 500〜 599人 |
92.01% | 98.40% | +6.39pt |
| 600〜 799人 |
99.92% | 102.64% | +2.72pt |
| 800〜 999人 |
99.10% | 108.94% | +9.84pt |
| 1,000〜 1,499人 |
104.09% | 104.12% | +0.03pt |
| 1,500〜 2,999人 |
106.24% | 107.06% | +0.82pt |
| 3,000人 以上 |
105.85% | 103.05% | △2.80pt |

令和8年度は、入学定員600人未満の区分がすべて100%未満、600人以上の区分がすべて100%超という並びになりました。3,000人以上を除く全区分で充足率は上がっていますが、小規模の区分ほど水準は低く、100人未満は83.72%です。
ただし、規模が大きいほど充足率が高くなるという単調な関係ではありません。400人以上500人未満(93.93%)は、その上の500人以上600人未満(98.40%)より低い水準です。区分は「以上・未満」で切られているため、たとえば入学定員がちょうど200人の大学は「200人以上300人未満」に入ります。前年度は600人以上1,000人未満の区分も100%を割っていたため、600人という数字を恒常的な境目として読むことはできません。
3,000人以上の大規模校だけが下げた
上の表で唯一マイナスなのが、入学定員3,000人以上の区分です。26校で、充足率は105.85%から103.05%へ2.80ポイント下がり、入学者数も3,496人減りました。
一方でこの区分の志願者数は168,060人増え、志願倍率は12.50倍から13.52倍へ上がっています。合格者数は21,307人減り、合格率は31.09%から27.56%へ低下しました。志願者を大きく集めながら、合格者数と入学者数は減った、という動きです。
この年度でもっとも充足率を伸ばしたのは、入学定員800人以上1,000人未満の区分でした(+9.84ポイント)。ただし、この集計は規模別の区分ごとの数字であり、受験生がどの規模の大学へ動いたかを追えるものではありません。
短期大学は、同じ「充足率上昇」でも中身が逆
大学と対照的なのが短期大学です。数字だけ見れば、充足率は73.84%から81.98%へ8.14ポイントも上昇しています。大学(+1.13ポイント)より大幅な改善です。
しかし内訳を見ると、様相が変わります。
| 項目 | 令和7年度 | 令和8年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 集計 学校数 |
249校 | 228校 | △21校 |
| 入学定員 | 38,038人 | 32,165人 | △5,873人(△15.4%) |
| 志願者数 | 35,236人 | 34,546人 | △690人(△2.0%) |
| 入学者数 | 28,086人 | 26,370人 | △1,716人(△6.1%) |
| 入学定員 充足率 |
73.84% | 81.98% | +8.14ポイント |
| 定員割れ校 | 220校(88.4%) | 176校(77.2%) | △44校 |

入学者数は6.1%減っています。それでも充足率が上がったのは、集計対象全体の入学定員が15.4%減ったからです。集計学校数も249校から228校へ21校減りました。
つまり短期大学の充足率上昇は、分母である入学定員が縮んだ結果です。同じ「充足率が上がった」でも、大学とは異なる背景があります。定員割れ校の割合はなお77.2%です。
「21校減」の読み方には注意が必要
入学定員の15.4%減には、集計に残っている学校の定員削減と、集計対象そのものの変化の両方が含まれます。継続している学校が定員を削っただけの数字ではありません。
学校法人の財務にとって何を意味するか
学生生徒等納付金は、教育中心の学校法人にとって経常収入の柱です。関東10法人の2025年度決算を比較した記事で算出した学生生徒等納付金比率(納付金÷経常収入)では、法政75.7%・明治73.6%・立教72.5%・青山学院71.7%・中央70.2%と、70%台の法人が並びました。入学者数はこの収入に効いてきます。
ただし同じ10法人でも、慶應義塾28.3%・日本大学53.8%と低い法人があります。附属病院の医療収入が経常収入に入るためで、こうした法人では入学者数の変動が収入に与える影響の度合いが変わってきます。
そのうえで、今回の資料を財務の目で読むときの留意点を3つ挙げます。
充足率の改善が、そのまま経営の好転を意味するわけではない
短期大学がその例です。分母である入学定員を削れば、入学者が減っていても充足率は上がります。ただし本資料に納付金収入のデータはないため、収入への影響は決算書で別途確認する必要があります。授業料の単価や在籍の継続状況が変わらなければ、入学者数の減少は将来の在籍者数と納付金収入を押し下げる要因になります。
未充足がただちに経営難を意味するわけでもない
これは私学事業団自身が資料に注記しているとおりです。入学定員に対する充足率は経営指標のひとつであり、資産の蓄積や収支の構造とは別の話です。
令和9年度は18歳人口が再び減少する見通し
私学事業団は資料の冒頭で「令和8年度は、18歳人口が前年度に比べ2千人増加したものの、令和9年度には再び減少に転じる見通しが示されています」と書いています。今回の数字は18歳人口が微増した年のものです。文部科学省の関係データ集では、18歳人口は令和23年に80万人を切ると予測されています。ただし充足率は入学定員の増減にも左右されるため、入学者数と入学定員の双方を継続して見ていく必要があります。
決算書と併せて確認しておきたい項目
次のあたりを、募集の数字と並べて見ておくと動きが掴めます。
- 在籍者数(入学者数だけでなく、学年ごとの在籍と退学の状況)
- 学生生徒等納付金の実額と、その前年度比
- 授業料等の単価改定の有無
- 入学定員そのものの変更(定員を減らせば充足率は上がります)
まとめ
- 令和8年度、私立大学の定員割れは275校(46.2%)となり、前年度から41校減って過半数を割りました
- 充足率の改善は、入学者が3,441人増えたことと入学定員を2,173人減らしたことの両方によります
- 志願者数は9.1%増の431万人で、推移表で最多の平成4年度の97.6%の水準です。ただしこれは各大学の報告値を積み上げた集計値で、個人単位の受験生数ではありません。18歳人口は平成4年前後から約半分になっています
- 令和8年度は入学定員600人未満の区分がすべて100%未満でした。ただし規模が大きいほど高いという単調な関係ではなく、前年度は600人以上1,000人未満も100%を割っていました
- 3,000人以上の大規模校のみ充足率が下がり(△2.80ポイント)、合格者数は21,307人減りました
- 短期大学の充足率上昇(+8.14ポイント)は入学定員が15.4%減ったことによるもので、入学者数は6.1%減っています
- 令和9年度は18歳人口が再び減少に転じる見通しです。充足率は入学定員の増減にも左右されるため、入学者数と定員の双方を見ていく必要があります
決算書の数字と募集の数字は、別々に見ていると気づかない関係があります。定員充足率の推移と、事業活動収支計算書の学生生徒等納付金を並べて確認しておくと、翌年度以降の見通しが立てやすくなります。
各法人の学生生徒等納付金比率や収支の実数は、決算比較の記事で扱っています。関東と関西のそれぞれで、同じ算式で並べています。



出典・注記
- 日本私立学校振興・共済事業団「令和8(2026)年度 私立大学・短期大学等入学志願動向」(2026年8月公表)。本記事の大学・短期大学の数値はすべて同資料によります。集計は「学校法人基礎調査」に基づき、基準日は各年度5月1日、株式会社が設置する学校は除かれます(PDF)。
- 令和8年度の集計値は速報値であり、次年度の入学志願動向の数値をもって確定数とされます(令和7年度の数値は今回の資料で確定数となりました)
- 入学定員充足率=入学者数÷入学定員、志願倍率=志願者数÷入学定員、合格率=合格者数÷受験者数。比率は小数点以下第3位を四捨五入した値です
- 記事中の18歳人口のグラフは、文部科学省「進学率・進学者数推計結果(出生低位・死亡低位)【外国人留学生数が現状のままであった場合】」(PDF)の数値をもとに当サイトで作成したものです。2021年が実績値、2025年以降が推計値です。同資料の定員充足率の試算(2035年93.38%・2040年72.75%)は、現在の入学定員の規模が維持された場合の数値であり、定員が縮小すれば結果は変わります
- 18歳人口の長期推移(昭和41年約249万人・平成4年前後約205万人・令和5年110万人・令和23年に80万人未満の予測)は、文部科学省「関係データ集(令和6年7月19日版)」(PDF)によります
- 集計学校数は、調査対象校から通信教育部のみを設置する学校および募集を停止している学校を除いた数です。大学は調査対象613校に対し集計595校、短期大学は調査対象278校に対し集計228校(いずれも令和8年度)でした
- 本資料には、個人単位の受験生数・1人あたりの出願校数・学生生徒等納付金の実額は含まれていません。本記事でもこれらには踏み込んでいません
- 規模別の集計は区分ごとの数値であり、受験生や入学者がどの規模の大学へ移動したかを示すものではありません
