【2025年度決算】関西の有名私大5法人を財務で比べてみた──関関同立+近大

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私立大学の「経営状況」は、入試の偏差値や知名度とは別の角度から見ることができます。各学校法人が毎年公開している決算書(計算書類)と事業報告書には、その大学が1年間でどれだけの収入を得て、何にお金を使い、どれだけ資産を蓄えているかが数字で示されています。

この記事では、関西の有名私立大学5法人(関西大学・関西学院・同志社・立命館・近畿大学)の2025年度(令和7年度)決算を、同じものさしで横並びに比較します。数字はすべて各法人が公開している決算書・事業報告書から取得し、日本私立学校振興・共済事業団(以下、私学事業団)が用いる標準的な算式で揃えました。

2024年度の関西5法人比較と同じ方法・同じ指標です。また、2025年度の関東10校比較とあわせて見ると、関東・関西の運用スタイルの違いも見えてきます。

この記事は要点をまとめた記事です。全5法人の詳細データ・各比率の分子分母・抽出プロセスは別途noteで公開しています(記事末尾にリンク)。


目次

結論:同志社・関大は収支改善、立命館は運用突出、近大は大型投資後の反動

先に大づかみの結論です。

  • 収支の余裕では、同志社が事業活動収支差額比率10.5%でトップ、関西大学も8.1%まで改善しました。関西大学は2024年度に教育活動収支がほぼトントンでしたが、2025年度は教育活動だけで33.7億円の黒字です。
  • 資金運用では、立命館が別格です。受取利息・配当金52.0億円、有価証券含み益は約720億円。2024年度時点でも運用が強い法人でしたが、2025年度はその差がさらに広がりました。
  • 近畿大学は基本金組入前で169.8億円の支出超過となりました。医学部・近畿大学病院移転に関連した減価償却額の追加計上、解体工事関連引当金、賞与引当金の影響が大きく、2024年度の大型投資が2025年度の損益に表れた年です。
  • 関西学院は経常段階では黒字ですが、第3号基本金引当特定資産評価差額26.2億円などにより、基本金組入前収支差額は5.8億円まで縮小しました。

2025年度決算では、改正された学校法人会計基準(令和6年文部科学省令第28号・2025年4月施行)が適用されています。これに伴い、賞与引当金や関連する特別支出・人件費計上が各法人の単年度数値に影響しています。単年度の比率だけで経営の優劣を判断せず、経年変化と注記をあわせて読む必要があります。

なお、学校法人会計では、基本金として必要な資金を保全した上で収支が均衡することが目指されており、黒字幅の最大化が目的ではありません。比率の高低は「経営の個性」として読むのが適切です。

以下、「①収支構造(稼ぎ方・使い方)」と「②資金運用(資産の活かし方)」の2つの切り口で見ていきます。


① 収支構造で見る5法人 ―― 事業活動収支計算書関係比率

学校法人会計では、収益性やコスト構造を「事業活動収支計算書関係比率」という指標群で表します。ここでは代表的な6つを取り上げます。各比率の算式は、私学事業団が公表する財務比率一覧(PDF)に準拠しています。

事業活動収支差額比率(2025年度・関西5校)
事業活動収支差額比率(2025年度・関西5校)
人件費比率(2025年度・関西5校)
人件費比率(2025年度・関西5校)
教育研究経費比率(2025年度・関西5校)
教育研究経費比率(2025年度・関西5校)
学生生徒等納付金比率(2025年度・関西5校)
学生生徒等納付金比率(2025年度・関西5校)
経常収支差額比率(2025年度・関西5校)
経常収支差額比率(2025年度・関西5校)
基本金組入後収支比率(2025年度・関西5校)
基本金組入後収支比率(2025年度・関西5校)

事業活動収支差額比率(収益性)

事業活動収支差額比率=基本金組入前当年度収支差額 ÷ 事業活動収入

基本金組入前の収支差額が事業活動収入に占める割合で、プラスが大きいほど当年度の収支に余裕があることを示します。

高い順 比率
同志社 10.5%
関西大学 8.1%
立命館 5.3%
関西学院 1.2%
近畿大学 △10.5%

2024年度は同志社8.4%、関西学院7.9%が上位でした。2025年度は、同志社がさらに伸び、関西大学が大きく改善しました。一方で近畿大学は△10.5%と大きくマイナスです。

近畿大学については、事業報告書でも、医学部・近畿大学病院移転に関連した減価償却額の追加計上、解体工事関連引当金、賞与引当金の計上により、事業活動収支差額比率が一時的に低下したと説明されています。近畿大学自身は、これら一過性の要因を除けば、基本金組入前当年度収支差額は16億円の収入超過になると説明しています(事業報告書)。構造的な経営悪化というより、大型投資の会計影響が一気に表れた年と読むべきです。

関西大学は「本業トントン」から大きく改善

2024年度の関西大学は、教育活動収支差額が△0.4億円と、授業料・補助金などの本業部分ではほぼトントンでした。2025年度はこれが33.7億円の黒字に改善しています。

さらに受取利息・配当金が27.0億円まで伸び、経常収支差額は60.3億円、経常収支差額比率は9.6%となりました。2024年度版では「本業ほぼトントン、金銭信託431億円の堅実派」と見ましたが、2025年度は本業も運用も効いた年です。

同志社は収支余力が最も強い

同志社は、事業活動収支差額比率10.5%で5法人トップです。教育活動収支差額42.6億円、経常収支差額53.7億円と、本業・経常の両方でしっかり黒字を出しています。

加えて、施設売却差額20.9億円、施設設備補助金11.3億円などの特別収入もあり、基本金組入前収支差額は75.6億円まで伸びました。

近畿大学は「病院移転後」の損益が出た

近畿大学は、2025年度も規模では5法人トップです。

法人 事業活動収入 事業活動支出 基本金組入前収支差額
近畿大学 1,623.0億円 1,792.8億円 △169.8億円
立命館 1,064.1億円 1,008.1億円 56.0億円
同志社 717.7億円 642.1億円 75.6億円
関西大学 637.1億円 585.5億円 51.6億円
関西学院 500.8億円 494.9億円 5.8億円

近畿大学は医療収入697.6億円を含むため、他4法人とは収入構造が異なります。学生生徒等納付金比率は39.2%で、他の4法人(65.9〜75.4%)とは別の世界です。

ただし、2025年度は支出も大きく膨らみました。教育研究経費は845.9億円、管理経費は245.4億円、教育活動支出計は1,733.7億円です。とくに管理経費には、病院移転等に関連する減価償却額の追加計上や解体工事関連引当金の影響が出ています。

基本金組入後収支比率 ―― 関西学院と近大は100%を大きく超える

基本金組入後収支比率=事業活動支出 ÷(事業活動収入 − 基本金組入額)

100%を超えると、当年度は基本金組入を含めて収支がマイナスだったことを意味します。校舎建設など大型投資の年は高くなります。

法人 基本金組入後収支比率
関西学院 125.7%
近畿大学 116.6%
立命館 104.1%
同志社 100.9%
関西大学 100.5%

関西学院は、経常段階では31.9億円の黒字ですが、基本金組入額が107.0億円と大きく、組入後収支比率が125.7%まで上がりました。近畿大学は組入前の段階ですでに支出超過であり、さらに基本金組入後も大きな支出超過となっています。

この比率が高い=経営が悪い、ではありません。ただし、なぜ高いのかは法人ごとに違います。関西学院は基本金組入・資産評価の影響、近畿大学は大型投資後の費用化・引当金の影響が大きい、という読み分けが必要です。


② 資金運用で見る5法人 ―― 有価証券と受取利息

私立大学は授業料収入だけでなく、蓄えた資産(特定資産・有価証券)を運用して得る収益も重要な財源です。とくに将来の奨学金や研究基金の原資となる「第3号基本金引当特定資産」をどれだけ持ち、どう運用しているかは、その法人の財務体力を映します。

なお、有価証券の保有額は貸借対照表の本表だけでは分からないことが多くあります(関西大学は本表0.3億円に対し、注記の明細表では833億円)。注記での確認方法は別記事で解説しています。

特定資産・第3号基本金引当特定資産の比較(2025年度末・関西5校)
特定資産・第3号基本金引当特定資産の比較(2025年度末・関西5校)
受取利息・配当金の比較(2025年度・関西5校)
受取利息・配当金の比較(2025年度・関西5校)
運用利回りの比較 ― インカム利回りとトータルリターン(2025年度・関西5校)
運用利回りの比較 ― インカム利回りとトータルリターン(2025年度・関西5校)
第3号基本金の充実度─総資産比(2025年度末・関西5校)
第3号基本金の充実度─総資産比(2025年度末・関西5校)
アセットアロケーション比較(2025年度・有価証券ベース・関西5校)
アセットアロケーション比較(2025年度・有価証券ベース・関西5校)

受取利息・配当金は立命館が断トツ

順位 受取利息・配当金
立命館 52.0億円
関西大学 27.0億円
同志社 11.0億円
関西学院 6.7億円
近畿大学 1.7億円

立命館の52.0億円は、2位関西大学の約2倍です。2024年度の29.7億円からさらに増え、運用収益が経常黒字の中心になっています。

関西大学も13.2億円から27.0億円へ伸びています。2025年度は、関西大学と立命館の2法人で、運用収益の存在感が大きく増しました。

立命館の含み益は約720億円

2025年度末の有価証券データです。

法人 有価証券簿価 有価証券時価 含み損益 受取利息・配当金
立命館 1,240億円 1,960億円 +720億円 52.0億円
関西大学 833億円 932億円 +99億円 27.0億円
同志社 817億円 842億円 +25億円 11.0億円
関西学院 482億円 497億円 +15億円 6.7億円
近畿大学 15億円 16億円 +0億円 1.7億円

立命館は、有価証券簿価1,240億円に対し、時価1,960億円。含み益は約720億円です。内訳を見ると、投資信託が簿価888億円、時価1,466億円で、含み益の大半を占めます。

2025年度の関東10校比較では、金銭信託・投資信託中心の法人が含み益、債券中心の法人が含み損という傾向が出ました。関西5法人では、立命館がまさに投資信託中心で含み益を大きく持つ法人です。

インカム利回りとトータルリターン利回り

運用の「利回り」には2つの見方があります。ひとつはインカム利回り(受取利息・配当金 ÷ 有価証券簿価)で、配当・利息だけの「実入り」です。もうひとつは、私学事業団が「学校法人の資産運用状況の集計結果」で用いるトータルリターン利回り(受取利息・配当金+売却損益+含み損益の期中増減 ÷ 運用対象資産)で、キャピタルゲイン・ロスまで含めた運用成果に近い指標です。

なお、インカム利回りは全法人で同じ算式にそろえていますが、分母が有価証券簿価であるため、有価証券の保有額が小さい法人では率が大きく出ます。近畿大学はまさにこのケースで、11.29%という数字だけで「運用が高利回り」と読むのは適切ではありません。両方を並べると次のようになります。

法人 インカム利回り トータルリターン利回り
立命館 4.20% 14.17%
関西大学 3.24% 6.38%
同志社 1.35% 1.78%
近畿大学 11.29% 0.18%
関西学院 1.39% △1.55%

立命館がトータルリターンで14.17%まで跳ねるのは、投資信託の含み益が1年で約172億円増えたためです。逆に関西学院が△1.55%とマイナスになるのは、第3号基本金引当特定資産の有価証券について強制評価損26.2億円を計上したことが響いています。

近畿大学はインカム利回りだけを見ると11.29%と高く見えます。ただし、分母となる有価証券簿価が15億円と小さいため、1.7億円の受取利息・配当金でも率が大きく出ます。運用対象資産(現金預金・特定資産・有価証券)まで含めて見るトータルリターン利回りは0.18%であり、実態としては「運用で稼ぐ法人」というより、後述のとおり実物投資を重視する法人です。

トータルリターンは含み損益の増減を丸ごと反映するため単年では大きく振れます。「実入りは細いが時価が伸びた/実入りは太いが時価は横ばい」という運用の質の違いは、2つの利回りを並べて初めて見えてきます(単年の高低で優劣は測れません)。

アセットアロケーションは5法人でかなり違う

有価証券簿価ベースの構成は次の通りです。

法人 主な構成
関西大学 金銭信託59%/債券41%
関西学院 債券88%/株式5%/時価なし7%
同志社 その他56%/債券43%
立命館 投資信託72%/その他19%/債券9%
近畿大学 時価なし77%/株式23%(ただし運用規模は小さい)

関西大学は金銭信託、関西学院は債券、同志社は「その他」、立命館は投資信託、近畿大学は実質的に小規模運用と、5法人でかなり方針が異なります。

近畿大学は「運用しない」構造が続く

近畿大学は、インカム利回りだけを見ると高く見えますが、これは有価証券簿価が小さいためです。総資産4,958億円の大規模法人である一方、有価証券簿価は15億円にとどまり、受取利息・配当金も1.7億円です。

2024年度は建設仮勘定が560億円あり、「運用に回さず、キャンパスと病院に投じる」構造がはっきり出ていました。2025年度は建設仮勘定が12億円まで減少し、その投資が建物・設備や損益に移っています。

つまり、近畿大学は「運用で増やす法人」ではなく、実物投資で事業基盤を作る法人です。2025年度の大幅赤字も、この文脈で読む必要があります。


2024年度からの変化

法人 事業活動収入前年差 組入前収支前年差 教育活動収支前年差 経常収支前年差 受取利息前年差
関西大学 +85.0億円 +34.9億円 +34.1億円 +47.7億円 +13.8億円
関西学院 +22.1億円 △31.9億円 △7.7億円 △7.3億円 +1.3億円
同志社 +65.1億円 +21.0億円 +2.1億円 +4.9億円 +2.8億円
立命館 +127.8億円 +33.1億円 +7.6億円 +33.8億円 +22.4億円
近畿大学 +52.9億円 △244.0億円 △196.8億円 △197.9億円 ほぼ横ばい

2025年度の変化を一言で言えば、関西大学と立命館は運用収益の伸びが収支を押し上げ、同志社は収支余力をさらに高め、近畿大学は大型投資の会計影響が一気に出た年です。


まとめ ―― 関西5法人の2025年度は「運用」と「投資後の反動」がテーマ

2025年度の関西5法人を見てきました。あらためて要点です。

  1. 同志社は収支余力トップ。事業活動収支差額比率10.5%、教育活動・経常ともに強い。
  2. 関西大学は2024年度から大きく改善。本業黒字化に加え、受取利息・配当金27.0億円が効いた。
  3. 立命館は運用が別格。受取利息・配当金52.0億円、有価証券含み益720億円。
  4. 関西学院は経常黒字だが組入前収支は低下。第3号基本金引当特定資産評価差額と大きな基本金組入に注意。
  5. 近畿大学は大型投資後の反動。病院移転関連の費用・引当金で単年度は大幅支出超過。

偏差値やブランドだけでは見えない「経営の個性」が、決算書には表れています。関関同立+近大という並びは受験ではなじみ深いですが、財務で見るとかなり違う法人群です。

同じ方法・同じ指標で比較した関東の有名私大10法人の2025年度決算比較も公開しています。関東と関西で運用文化がどう違うかも見えてきますので、あわせてご覧ください。

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また、本記事の5法人を含む主要私大15法人については、新しい学校法人会計基準で導入されたセグメント情報の注記が2025年度決算の計算書類でどう書かれたかを別記事で横断比較しています。決算書を注記まで読み込みたい方はこちらもご覧ください。

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全5法人の詳細データ・元Excelはnoteで

本記事では横並びの要点に絞りました。1法人ずつ章を立てた深掘り(比率の分子・分母の生数値つき)、5法人の横断データ表、関東10校との対比、そして元データのExcel(自校の数値を入れると財務比率を自動計算できるシート付き)は、noteで公開しています。

👉 関西有名私大5校 2025年度決算 徹底比較【完全版】(note・有料)


出典・注記

  • 数値はすべて各学校法人が公開している2025年度(令和7年度)決算書(計算書類)および事業報告書より取得。
  • 比率は私学事業団『今日の私学財政』に準拠した算式で算出。「経常収入=教育活動収入計+教育活動外収入計」。各比率の算式は私学事業団財務比率一覧(PDF)を参照。
  • 億円表記は四捨五入。比率は小数第1位。
  • インカム利回りは「受取利息・配当金 ÷ 注記②有価証券簿価合計」で全校とも同一に算出したグロス指標です。分子の受取利息・配当金には預金利息や非上場株式の配当等も含まれます(これは全校共通)。近畿大学は有価証券簿価が小さいため率が大きく出ますが、算式は他法人と同じです。
  • トータルリターン利回りは、私学事業団『学校法人の資産運用状況の集計結果』の資産運用利回りの定義に準拠し、〔受取利息・配当金+有価証券売却差額(売却益)−有価証券処分差額(売却損)−有価証券評価差額(強制評価損)+含み損益の期中増減(当期末−前期末)〕÷運用対象資産(特定資産+有価証券〈BS本表〉+現金預金)で算出。前期末の含み損益は各法人の前年度決算の注記②から取得。分母は当年度末残高(私学事業団は前期末・当期末平均)で関東10校版と統一。単年の時価変動を含むため振れが大きく、経年での評価が前提です。
  • 含み損益は注記「有価証券の時価情報」の②明細表における時価と貸借対照表計上額(簿価)の差。満期保有目的の債券は満期償還で額面が戻るため、評価上の含み損が確定損失となるわけではありません。
  • 各法人の公開ページ:
  • 関西大学:https://www.kansai-u.ac.jp/zaimu/index.html
  • 関西学院:https://ef.kwansei.ac.jp/disclosure/report
  • 同志社:https://www.doshisha.ed.jp/finance/
  • 立命館:https://www.ritsumeikan-trust.jp/publicinfo/about/finance/
  • 近畿大学:https://www.kindai-sc.jp/disclosure/financial-report/
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この記事を書いた人

経理・財務が10年以上の大学職員です。

資格:簿記2級、FP2級、TOEIC L&R 920点
投資年数:10年以上
投資対象:投資信託(主にインデックス投資)、暗号資産、米国株

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