【改正私立学校法】会計監査人の設置義務がある学校法人とは

当サイトのリンクには広告が含まれています。

改正私立学校法(令和7年4月1日施行)で、学校法人にも「会計監査人」の制度が本格的に導入されました。ここで悩ましいのが、「自分の法人は会計監査人を置かなければならないのか、それとも任意なのか」という線引きです。本記事では、学校法人の経理部・財務部向けに、会計監査人の設置義務がどの法人から生じるのかを、根拠条文と政令の金額基準にそって整理します。

「会計監査人の設置義務」と「常勤の監事を置く義務」は、どちらも規模の大きい法人に課される制度ですが、判定に使う金額基準がまったく別です(会計監査人は経常収益10億円・負債20億円、常勤監事は経常収益100億円・負債200億円)。この記事の後半で整理しますので、混同しないようご注意ください。

目次

結論の早見表

先に結論をまとめます。自分の法人がどの区分に当たるかで、設置が義務か任意かが決まります。

区分 会計監査人の設置 根拠
大学・高等専門学校を設置する法人(文部科学大臣所轄) 義務(無条件で該当) 法第143条・第144条
知事所轄でも政令の金額・区域基準に該当する法人 義務 法第143条・第144条、施行令第3条
上記以外の学校法人(中小規模の知事所轄法人など) 任意(寄附行為で定めれば設置可) 法第18条第2項

義務がかかる法人をまとめて「大臣所轄学校法人等」と呼びます。大学・高専を設置していれば無条件で該当し、そうでなくても事業の規模・区域が政令の基準に該当すれば該当します。

関係法令の整理

法令 該当条文 内容
私立学校法(令和5年改正・令和7年4月1日施行) 第18条第2項 会計監査人の任意設置
第143条 「大臣所轄学校法人等」の定義
第144条第1項 大臣所轄学校法人等の会計監査人設置義務
第145条 常勤の監事の選定の特例
私立学校法施行令 第3条 大臣所轄学校法人等の金額・区域基準
第4条 常勤の監事の選定特例の基準

原則は「任意設置」

まず出発点を押さえます。私立学校法第18条第2項は、学校法人は「寄附行為をもつて定めるところにより、会計監査人を置くことができる」と規定しています。つまり会計監査人の設置は原則として任意で、置くかどうかは各法人が寄附行為で決める建付けです。

この原則の例外として、一定の法人に設置義務を課しているのが第144条第1項です。

義務になるのは「大臣所轄学校法人等」

第144条第1項は、「大臣所轄学校法人等は、第十八条第二項の規定にかかわらず、会計監査人を置かなければならない」と定めています。任意設置の原則を覆して、置くことを義務づける条文です。

では「大臣所轄学校法人等」とは誰か。第143条が次のように定義しています。

  • 文部科学大臣が所轄庁である学校法人(=大学・高等専門学校を設置する学校法人。第4条第3号・第5号)
  • それ以外の学校法人でも、事業の規模又は事業を行う区域が政令で定める基準に該当するもの

前者、つまり大学・高専を設置する法人は、規模を問わず無条件で大臣所轄学校法人等に当たり、会計監査人の設置が義務になります。後者は、都道府県知事が所轄庁である法人(高校以下のみを設置する法人など)でも、政令の基準を超えれば義務の対象に入る、という趣旨です。

政令の基準(施行令第3条)

知事所轄法人が大臣所轄学校法人等に該当するかどうかは、私立学校法施行令第3条の基準で判定します。次のいずれか一つに当てはまれば該当します。

区分 基準(いずれか一つに該当で義務)
事業の規模(第1項第1号) 最終会計年度の収支計算書に基づく経常的な収益の額が10億円以上
事業の規模(第1項第2号) 最終会計年度の貸借対照表の負債の部の合計額が20億円以上
事業を行う区域(第3項第1号) 3以上の都道府県の区域内に私立学校・私立専修学校・私立各種学校を設置
事業を行う区域(第3項第2号) 広域の通信制の課程を置く私立高等学校(私立中等教育学校の後期課程を含む)を設置

ここでいう「最終会計年度」とは、理事会の承認(法第104条第3項)を受けた計算書類に係る会計年度のうち、最も遅い会計年度を指します(施行令第3条第1項第1号かっこ書き)。まだ計算書類の承認を受けていない設立直後の期間については、成立時の貸借対照表の負債の部の合計額が20億円以上かどうかで判定します(同条第2項)。

4つの基準は「いずれか一つ」に当たれば該当します。負債が20億円未満でも、3つ以上の都道府県に学校を設置していれば会計監査人の設置義務が生じる、という点に注意してください。

なお、大臣所轄学校法人等の定義は、計算書類・財産目録等の公表義務や閲覧請求権の範囲にも連動します。公表・備置き・閲覧のルールは計算書類・財産目録等の公表義務と備置き・閲覧の実務で整理していますので、合わせてご覧ください。

「常勤の監事」の基準とは別物

冒頭でも触れたとおり、混同しやすいのが常勤の監事を置く義務です。こちらは第145条が根拠で、「大臣所轄学校法人等のうちその事業の規模又は事業を行う区域が特に大きいもの」に対して、常勤の監事を定めることを義務づけています。

その金額基準は施行令第4条で、経常的な収益の額が100億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上とされています。会計監査人の設置基準(10億円・20億円)のちょうど10倍です。

制度 根拠 金額基準
会計監査人の設置義務 法第144条・施行令第3条 経常収益10億円以上/負債20億円以上
常勤の監事の選定義務 法第145条・施行令第4条 経常収益100億円以上/負債200億円以上

「会計監査人を置く義務がある=常勤監事も必要」ではありません。会計監査人の設置義務はあっても、規模が100億円・200億円に届かなければ常勤監事までは求められない、という法人が多数を占めます。判定の際は2つの基準を切り分けて確認してください。

経過措置――施行日で即義務ではない

会計監査人の設置義務には経過措置があります。私立学校法等の一部を改正する法律の附則第9条第1項は、施行の際に現に存在し大臣所轄学校法人等に該当する法人(既存大臣所轄学校法人等)について、「施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時までは」第144条第1項を適用しないと定めています。

つまり、施行日(令和7年4月1日)の時点で既に大臣所轄学校法人等だった法人も、施行と同時に会計監査人が必要になるわけではなく、施行後最初の定時評議員会が終わるまでの猶予があります。常勤の監事の義務(第145条)についても、同条第2項で同様の経過措置が置かれています。

会計監査人を置くと何が変わるか

会計監査人を設置すると、機関設計と決算実務が次のように変わります。

  • 選任:評議員会の決議で選任します(第80条)。選任等に関する議案の内容は監事が決定します(第84条)。
  • 資格:会計監査人になれるのは公認会計士(外国公認会計士を含む)または監査法人に限られます(第81条)。
  • 任期:選任後1年以内に終了する会計年度に関する定時評議員会の終結時までで、別段の決議がなければ再任とみなされます(第82条)。
  • 職務:計算書類及びその附属明細書、財産目録(貸借対照表に対応する項目)を監査し、会計監査報告を作成して監事及び理事会に提出します(第86条、施行規則第24条)。財産目録の監査対象範囲は学校法人の財産目録の作り方で詳しく解説しています。
  • 計算書類の監査体制:会計監査人設置法人では、計算書類及びその附属明細書は監事及び会計監査人の両方の監査を受けます(第104条第2項)。

あわせて、助成法との関係も整理しておくと安心です。従来、経常的補助金を受ける学校法人には私立学校振興助成法第14条による公認会計士等の監査が原則として課されていましたが(補助金が少額で所轄庁の許可を受けた場合を除きます)、会計監査人設置学校法人等(会計監査人設置法人+大臣所轄学校法人等)はその対象から除外されます(同条第2項かっこ書き)。私学法上の会計監査報告が助成法の監査報告に代わるため、二重監査にはなりません。

監事の監査と会計監査人の監査がどう役割分担されるのか、監査報告の名称や作成期限の違いは、監事監査と会計監査人監査はどう違う?で詳しく整理していますので、合わせてご覧ください。

おわりに

会計監査人の設置義務は、大学・高専を設置していれば無条件で、そうでなくても経常収益10億円・負債20億円・3都道府県・広域通信制高校のいずれかに当たれば生じます。判定に使う「最終会計年度」の数値と、常勤監事の別基準(100億円・200億円)を取り違えないことがポイントです。

自法人の該当区分や経過措置の起算日について迷う場合は、所轄庁(都道府県私学担当課)や顧問の公認会計士にご確認ください。

※本記事は令和7年4月1日施行の改正私立学校法・私立学校法施行令・私立学校振興助成法(いずれもe-Gov法令検索の現行条文)に基づき作成しています。

改正私立学校法の全体像は以下で解説していますので、合わせてご覧ください。

あわせて読みたい
私立学校法の改正まとめ(2023/令和5年度改正) 私立学校法(大学関係者間での通称「私学法」)が改正され、2025(令和7)年4月1日に施行されました。 2023(令和5)年4月26日に参議院本会議にて可決され、5月8日に公...

学校法人会計・大学財務に関する当ブログの記事は、テーマ別のガイドページに整理していますので、合わせてご覧ください。

あわせて読みたい
学校法人会計・大学財務の記事ガイド【総まとめ】 学校法人会計・大学財務に関する当ブログの記事をテーマ別に整理したガイドページ。基礎、改正対応、私学助成金、決算分析、資産運用、AI活用まで。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

経理・財務が10年以上の大学職員です。

資格:簿記2級、FP2級、TOEIC L&R 920点
投資年数:10年以上
投資対象:投資信託(主にインデックス投資)、暗号資産、米国株

目次