私立大学の「経営状況」は、入試の偏差値や知名度とは別の角度から見ることができます。各学校法人が毎年公開している決算書(計算書類)と事業報告書には、その大学が1年間でどれだけの収入を得て、何にお金を使い、どれだけ資産を蓄えているかが数字で示されています。
関西の私立大学というと関関同立が取り上げられることが多く、産近甲龍(京都産業・近畿・甲南・龍谷)の4法人を横並びにした決算比較はあまり見かけません。この記事では、この4法人の2025年度(令和7年度)決算を、同じものさしで比較します。数字はすべて各法人が公開している決算書・事業報告書から取得し、日本私立学校振興・共済事業団(以下、私学事業団)が用いる標準的な算式で揃えました。
結論:4法人を主要指標で早見する
先に大づかみの結論です。4法人の主要指標を一覧にしました(億円は四捨五入、比率は小数第1位。含み損益は決算書注記②「有価証券の時価情報」明細表の時価と簿価の差)。
| 指標 | 京都産業 | 甲南 | 龍谷 | 近畿 |
|---|---|---|---|---|
| 事業活動収入計 | 276.9億 | 168.7億 | 396.3億 | 1,623.0億 |
| 総資産 | 1,561.4億 | 935.1億 | 1,935.5億 | 4,957.9億 |
| 事業活動収支差額比率 | 10.4% | 2.0% | 8.9% | △10.5% |
| 基本金組入後収支比率 | 97.2% | 117.7% | 98.2% | 116.6% |
| 含み損益(注記②) | △22.7億 | +179.0億 | △5.0億 | +0.3億 |
| 流動比率 | 225.9% | 351.9% | 162.5% | 179.2% |
| 純資産構成比率 | 90.6% | 92.0% | 80.4% | 83.2% |
ポイントを3つに絞ると、次のとおりです。
- 収支の余裕では、京都産業(10.4%)・龍谷(8.9%)が高く、近畿大学が4法人で唯一マイナスでした。近畿は病院移転関連の一時費用が重く、基本金組入前で約170億円の支出超過です。医療事業を持たない3法人のうち甲南は2.0%と、収支の余裕はいちばん小さい姿でした。
- 2025年度末の含み損益(時価と簿価の差)に、運用スタイルの違いがはっきり表れました。株式中心の甲南だけが大きな含み益(+179.0億円)、債券中心の京都産業は含み損(△22.7億円)、金銭信託と債券を混ぜた龍谷はほぼ均衡(△5.0億円)、そして近畿は実質的に運用していません。「何で運用したか」が損益の向きを分ける構図です。
- 財務の手厚さ(安全性)は甲南が突出。流動比率351.9%・純資産構成比率92.0%はともに4法人トップで、そこに含み益179億円が乗ります。一方で固定比率が100%を超えたのは龍谷(113.4)と近畿(103.0)の2法人でした。
以下、「収支構造(稼ぎ方・使い方)」「資金運用(資産の活かし方)」「財務体力(安全性)」の3つの切り口で見ていきます。
収支構造で見る4法人:稼ぎ方と使い方

事業活動収支差額比率:近畿だけがマイナス
事業活動収支差額比率=基本金組入前当年度収支差額 ÷ 事業活動収入
基本金組入前の収支差額が事業活動収入に占める割合で、プラスが大きいほど当年度の収支に余裕があることを示します。
| 高い順 | 比率 | 組入前収支差額(絶対額) |
|---|---|---|
| 京都産業 | 10.4% | +28.8億円 |
| 龍谷 | 8.9% | +35.3億円 |
| 甲南 | 2.0% | +3.4億円 |
| 近畿 | △10.5% | △169.8億円 |
京都産業が3つの収支差額比率(事業活動・経常・教育活動)すべてで首位でした。龍谷も8.9%と高く、絶対額の組入前収支差額では龍谷(+35.3億円)が京都産業(+28.8億円)を上回ります。一方で近畿大学は4法人で唯一マイナスです。近畿のマイナスは、医学部・近畿大学病院の移転に関連した一時費用(追加の減価償却額、解体工事関連引当金、賞与引当金の期首一括計上など)が主因で、本業の構造的な赤字ではありません。近畿自身も、これら一過性の要因を除けば基本金組入前当年度収支差額は収入超過になると事業報告書で説明しています。この読み方は関西5法人の2025年度決算比較で詳しく取り上げたとおりです。前述のとおり、単年度の高低だけで優劣は断じられません。
なお甲南は、医療事業を持たない3法人の中では収支の余裕が最も小さい姿でした。事業活動収支差額比率2.0%、教育活動収支差額はわずか+2.6億円(比率1.7%)です。後述するとおり甲南は含み益179億円という厚いストックを持ちますが、「貸借対照表上の含み益」と「単年度の収支の余裕」は別物である好例です。
基本金組入後の姿:甲南の当年度赤字は「積立の結果」
基本金組入後収支比率=事業活動支出 ÷(事業活動収入 − 基本金組入額)
100%を超えると、当年度は基本金組入を含めて収支がマイナスだったことを意味します。校舎建設など大型投資や積立を厚くした年は高くなります。
| 法人 | 基本金組入後収支比率 | 当年度収支差額(組入後) |
|---|---|---|
| 京都産業 | 97.2% | +7.1億円 |
| 龍谷 | 98.2% | +6.5億円 |
| 甲南 | 117.7% | △24.9億円 |
| 近畿 | 116.6% | △255.8億円 |

100%を超えたのは甲南(117.7)と近畿(116.6)の2法人ですが、同じ「組入後赤字」でも中身は正反対です。
甲南は、基本金組入前は+3.4億円の黒字でした。そこに基本金組入28.3億円(基本金組入率16.8%は4法人で最も厚い)を行った結果、組入後が△24.9億円になっています。将来に向けた資産形成を当年度に厚めに行った姿であって、収益力が不足しているわけではありません。これに対して近畿は、基本金組入前の段階ですでに△169.8億円で、そこに組入86.0億円を重ねて△255.8億円となりました。前述の病院移転に伴う一時費用が正体です。この比率が高い=経営が悪い、ではない点は繰り返し確認しておきたいところで、なぜ高いのかは法人ごとに読み分ける必要があります。京都産業・龍谷は組入後も100%未満で、基本金組入を行ってなお黒字を維持しています。
学納金・人件費に見る近畿の「別カテゴリ」
授業料などへの依存度と、人件費のバランスを見ます。ここで使う4つの比率の算式は次のとおりです。
学生生徒等納付金比率=学生生徒等納付金 ÷ 経常収入
人件費依存率=人件費 ÷ 学生生徒等納付金
人件費比率=人件費 ÷ 経常収入
教育研究経費比率=教育研究経費 ÷ 経常収入
いずれも事業活動収支計算書の数字から計算します。名前の似た2つの人件費指標のうち、人件費依存率だけは分母が納付金(人件費を授業料等の収入だけでまかなえているか)で、ほかの3つは分母が経常収入です。
| 比率 | 京都産業 | 甲南 | 龍谷 | 近畿 |
|---|---|---|---|---|
| 学生生徒等納付金比率 | 72.3% | 70.8% | 70.3% | 39.2% |
| 人件費依存率 | 57.2% | 64.3% | 61.1% | 103.2% |
| 人件費比率 | 41.3% | 45.5% | 43.0% | 40.4% |
| 教育研究経費比率 | 39.8% | 41.5% | 40.1% | 53.3% |



京都産業・甲南・龍谷は学生生徒等納付金比率が70〜72%台にそろう「授業料型」です。一方、近畿だけが39.2%と低くなっています。学生生徒等納付金比率の分母は経常収入なので、医療収入が加わって分母が膨らむ近畿では低く出るためです。人件費依存率(人件費÷納付金)も近畿だけ103.2%と100%を超えますが、こちらは分子の人件費に病院部門の人件費が含まれる一方で分母は納付金だけ、という医療型の構造によるもので、人件費そのものが過大という意味ではありません。近畿の教育研究経費比率が最も高い(53.3%)のも、医療経費約492.1億円を含むためです。医療事業を持つかどうかで、収支構造そのものが変わることが読み取れます。
人件費比率は4法人とも40〜46%台に収まり、大きな差はありません。管理経費比率は他の3法人が6〜7%で横並びなのに対し、近畿だけ15.5%と高く出ますが、これも病院移転関連の一時費用(追加減価償却・解体工事関連引当金)を管理経費に計上したためで、恒常的なコスト高ではありません。
資金運用で見る4法人:含み損益に表れた運用スタイルの三者三様
私立大学は授業料収入だけでなく、蓄えた資産(特定資産・有価証券)を運用して得る収益も重要な財源です。ここで産近甲龍では、運用スタイルが三者三様で、それがそのまま含み損益の向きに直結するという、この記事でいちばんの見どころが現れます(近畿は実質的に運用していないので、実質は他の3法人の対比です)。

| 法人 | 注記②簿価 | 注記②時価 | 含み損益 | 運用の中心 |
|---|---|---|---|---|
| 京都産業 | 468.4億 | 445.7億 | △22.7億 | 債券(注記②の約94%) |
| 甲南 | 109.2億 | 288.2億 | +179.0億 | 株式(注記②の約48%) |
| 龍谷 | 562.4億 | 557.4億 | △5.0億 | 金銭信託+債券のミックス |
| 近畿 | 15.5億 | 15.8億 | +0.3億 | 実質無運用(現金預金543億で保有) |
同じ関西の中堅私大でありながら、運用の中身は3通りに分かれます。
- 京都産業=ほぼ債券のみ(含み損):注記②合計468.4億円の約94%が債券で、金利上昇局面の満期保有債券が中心です。債券は簿価438.4億円→時価416.3億円で含み損、全体で△22.7億円(注記②の時価と簿価の差△2,266百万円)と、4法人で最大の含み損(絶対額)でした。ただし満期保有目的の債券は、発行体が予定どおり償還する限り満期で額面が戻るため、評価上の含み損がただちに損失となるわけではありません。
- 甲南=株式で巨大な含み益:株式が簿価52.9億円→時価228.9億円で含み益176.0億円、投資信託も含み益6.1億円が乗り、債券のみ△3.1億円。全体で+179.0億円の含み益です。値上がりを取りにいく資産(株式・投資信託)が相場の追い風で含み益を生む構図は、関東10校の比較で見た金銭信託・投信型と重なります。
- 龍谷=金銭信託と債券のミックス(ほぼ均衡):注記②の明細表で「金銭信託」を独立科目として掲記しており(簿価104.5億円→時価117.6億円で含み益+13.1億円)、債券は簿価434.8億円→時価416.6億円で含み損△18.2億円。金銭信託の含み益が債券の含み損をおおむね相殺し、全体では△5.0億円とほぼ均衡しています。債券中心の京都産業と株式中心の甲南の、ちょうど中間に位置する運用です。金銭信託を「その他」ではなく独立の種類として明示する開示は、当ブログがこれまで見てきた法人の中では少数派です。
金利が上がる局面で「何で運用したか」が損益を分けるという、日東駒専の2025年度決算比較や関東10校の比較でも見られた構図が、関西の中堅私大でも成立しています。ただし各法人とも組入銘柄(どの債券か、株式・金銭信託の中身が何か)までは公表しておらず、含み損益が何によって生じたかの内訳は特定できません。
「有価証券は貸借対照表本表でなく注記で見る」の意味がよく分かる甲南と龍谷
決算書を読むときに見落としやすいのが、有価証券の見る場所です。甲南の貸借対照表(BS)本表の有価証券はわずか1,050万円(時価のない有価証券のみ)にとどまりますが、注記②の有価証券合計は109.2億円。本表だけを見ると、含み益179億円を丸ごと見落とします。同じことは龍谷でも起きており、本表の有価証券は1,900万円なのに、注記②合計は562.4億円です。
差の大半は、減価償却引当・退職給与引当・第2号/第3号基本金引当や、甲南でいえば平生太郎基金引当特定資産といった特定資産の内側で運用されているためです。京都産業もBS本表の有価証券は25.1億円ですが、注記②は468.4億円。3法人とも、運用の実態は貸借対照表の本表からは見えず、注記②の明細表で初めて分かります。

龍谷の「隠れ外貨資産」
龍谷は有価証券の運用に加えて、もう一つ特徴があります。流動資産の外貨建普通預金に1,284万3,877米ドルを保有しており、取得時の計上額17.7億円が年度末換算で20.5億円になっています(為替差額約2.86億円)。ただしこの資産は取得時換算の原価法で評価され、為替差額は未実現のため損益計算書には計上されておらず、注記に記載されているのみです。この外貨資産は有価証券の注記ではなく普通預金に含まれているため、有価証券欄だけを見ると見落とします。甲南も少額(約106万米ドル)の外貨建現預金を持ちますが、規模は小さく年度末の換算差額もありません。
受取利息・配当金:運用資産の厚い龍谷が最多
| 順位 | 受取利息・配当金 |
|---|---|
| 龍谷 | 19.4億円 |
| 甲南 | 7.9億円 |
| 京都産業 | 6.1億円 |
| 近畿 | 1.7億円 |

配当・利息の「実入り」では、注記②簿価562.4億円という運用資産を持つ龍谷が19.4億円で最多でした。甲南7.9億円、京都産業6.1億円と続きます。規模が最も大きい近畿が1.7億円と最小で、実質無運用の姿がここにも表れています。近畿は総資産4,958億円の大規模法人ですが、有価証券簿価は15.5億円にとどまり、現金預金543.3億円をそのまま保有しています。運用で増やすのではなく、実物投資(キャンパス・病院)で事業基盤を作る法人という位置づけは、関西5法人の比較でも確認したとおりです。
特定資産と第3号基本金の厚み
先ほど触れた特定資産(使途を定めて別枠で管理する資産)の合計と、その一種である第3号基本金引当特定資産(元本を取り崩さず、運用益で奨学金や研究といった事業を支える基金)の残高も並べておきます。
| 法人 | 特定資産合計 | 第3号基本金引当特定資産 | 第3号の総資産比 |
|---|---|---|---|
| 京都産業 | 594.0億 | 95.0億 | 6.1% |
| 甲南 | 247.2億 | 51.9億 | 5.6% |
| 龍谷 | 602.7億 | 6.0億 | 0.3% |
| 近畿 | 620.7億 | 10.1億 | 0.2% |


特定資産の絶対額は近畿・龍谷・京都産業が600億円前後で並びますが、内訳を見ると性格が異なります。総資産に対する特定資産の割合(特定資産構成比率)では京都産業が38.0%で最も厚く、龍谷31.1%・甲南26.4%と続き、移転投資で特定資産が薄くなった近畿は12.5%です。第3号基本金引当特定資産で見ると、京都産業が95.0億円(総資産比6.1%)と突出し、甲南51.9億円(5.6%)が続きます。龍谷・近畿は第3号の残高が小さく、将来事業を支える基金の厚みという点では京都産業・甲南に厚みがありました。内部留保資産比率でも京都産業39.1%・甲南29.3%・龍谷19.6%・近畿6.8%の順で、蓄えの厚さは京都産業がリードしています。
財務体力で見る4法人:甲南の安全性が突出

貸借対照表の安全性指標を並べると、甲南の手厚さが際立ちます。ここで使う比率はすべて貸借対照表の数字から計算します。
流動比率=流動資産 ÷ 流動負債
純資産構成比率=純資産 ÷ 総資産
総負債比率=総負債 ÷ 総資産
固定比率=固定資産 ÷ 純資産
流動比率は高いほど短期の支払余力が厚く、純資産構成比率は高いほど(総負債比率は低いほど)負債の軽い体質です。固定比率は低いほど健全で、100%未満なら校舎などの固定資産を自己資金の範囲でまかなえていることを示します。
| 比率 | 京都産業 | 甲南 | 龍谷 | 近畿 |
|---|---|---|---|---|
| 流動比率 | 225.9% | 351.9% | 162.5% | 179.2% |
| 純資産構成比率 | 90.6% | 92.0% | 80.4% | 83.2% |
| 総負債比率 | 9.4% | 8.0% | 19.6% | 16.8% |
| 固定比率 | 99.9% | 96.3% | 113.4% | 103.0% |
流動比率351.9%は4法人で最も高く、短期の支払余力が際立ちます(現金預金100.7億円など、流動資産の厚みが背景)。純資産構成比率92.0%・総負債比率8.0%も4法人でそれぞれ最も手厚く、負債の軽さが分かります。ここに前述の含み益179億円が乗るため、ストック(蓄え)の強さという点では甲南が4法人で最も手厚いと言えます。ただし甲南は単年度の収支の余裕が小さい点は前述のとおりで、ストックとフローの姿が対照的な法人です。
固定比率が100%を超えたのは龍谷(113.4)と近畿(103.0)の2法人です。ただし龍谷は固定長期適合率(=固定資産 ÷(純資産+固定負債))が96.4%と100%未満で、固定資産は自己資金+固定負債(長期借入206.1億円)の範囲に収まっています。長期の借入で校舎などの固定資産をまかなう「借りて建てる」型で、健全性の枠内です。京都産業(99.9)・甲南(96.3)は固定比率も100%未満で、固定資産を自己資金の範囲でまかなえています。なお固定長期適合率は4法人とも100%未満(91.6〜96.4)でした。
龍谷は総負債比率19.6%・負債比率24.4%が4法人で最も高く出ますが、これは長期借入206.1億円を使ったレバレッジ型の姿です。借入金等利息比率は0.5%とわずかに乗るものの、固定長期適合率が健全枠内である点とあわせて読む必要があります。
まとめ:関西の中堅私大でも「経営の個性」は数字に出る
2025年度の産近甲龍4法人を見てきました。あらためて要点です。
- 運用スタイルが三者三様で、それが含み損益の向きをそのまま決める ―― 株式中心の甲南は含み益+179.0億円、債券中心の京都産業は含み損△22.7億円、金銭信託と債券を混ぜた龍谷はほぼ均衡(△5.0億円)。「何で運用したか」が損益を分ける構図が、関西の中堅私大でも成立しました(近畿は実質無運用)。
- 「有価証券は貸借対照表本表でなく注記で見る」の意味がよく分かるのが甲南と龍谷 ―― 甲南はBS本表1,050万円に対し注記②109.2億円、龍谷は本表1,900万円に対し注記②562.4億円。本表だけ見ると運用の実態を完全に取り逃します。
- 同じ「基本金組入後100%超」でも中身は正反対 ―― 甲南(117.7)は組入前+3.4億円の黒字を基本金組入28.3億円で厚くした「積立の結果」、近畿(116.6)は組入前からの△169.8億円で病院移転の一時費用が正体。一括りにはできません。
- 甲南はストック最強・フロー最薄 ―― 流動比率351.9%・純資産構成比率92.0%と安全性は突出し、含み益179億円も持つ一方、教育活動収支差額比率は1.7%と単年度の収支の余裕は4法人で最も小さい。蓄えの潤沢さと単年度の収支は別物です。
- 収益性と内部留保の総合力は京都産業が首位 ―― 事業活動・経常・教育活動の3つの収支差額比率すべてで4法人トップ、特定資産構成比率38.0%・第3号基本金95.0億円・内部留保資産比率39.1%も最厚。派手な含み益はないものの、本業と蓄えが最も安定していました。
偏差値やブランドだけでは見えない「経営の個性」が、決算書には表れています。志望校選びや、学校法人の経理・財務に携わる方の比較材料として参考になれば幸いです。
近畿大学の運用しない構造や病院移転後の損益は、関関同立を含む関西5法人の比較記事でより詳しく取り上げています。近畿の位置づけを他の関西有名私大の中で見たい方は、あわせてご覧ください。

同じ方法・同じ指標で、関東の日東駒専4法人(東洋・駒澤・専修・日本大学)も比較しています。関東と関西で運用スタイルがどう違うかもあわせて見えてきます。関東の大手10校(早慶上理・MARCH・日大)は、関東10法人の比較記事をご覧ください。

決算書の読み方や財務比率の意味をまとめた記事の一覧は、こちらのガイドからたどれます。

出典・注記
- 数値はすべて各学校法人が公開している2025年度(令和7年度)決算書(計算書類)および事業報告書より取得しています。
- 近畿大学の数値は関西5法人の比較記事で用いたものと同一です(移転一時費用の内訳・運用しない構造の詳細は同記事の出典を参照)。
- 比率は私学事業団の算式に準拠して算出しました。各比率の算式は私学事業団財務比率一覧(PDF)を参照。事業報告書に財務比率の記載がある法人は公表値と突合し、一致を確認しています。
- 含み損益は決算書注記「有価証券の時価情報」②明細表における時価と貸借対照表計上額(簿価)の差です。京都産業の含み損は原数値で△2,266百万円(本文では△22.7億円と表記)。満期保有目的の債券は、発行体が予定どおり償還する限り満期で額面が戻るため、評価上の含み損がただちに確定損失となるわけではありません。
- 有価証券の組入銘柄(債券・株式・金銭信託の中身)、龍谷・甲南の外貨建資産の運用内訳は各法人とも非開示のため、含み損益・保有の事実は述べても中身の特定はしていません。
- 改正学校法人会計基準(令和6年文部科学省令第28号・2025年4月施行)初年度の賞与引当金の期首計上は、4法人すべてで確認しています(京都産業7.06億円・甲南6.46億円・龍谷10.98億円・近畿40.0億円。いずれも科目名「賞与引当金特別繰入額」で特別支出に計上)。甲南は加えて役員退職慰労引当金を当年度計上しています。
- 関東10校・関西5法人・日東駒専の比較記事に掲載している運用利回りの図(インカム利回り・トータルリターン)は、本記事では見送りました。トータルリターンの算出に必要な前年度の時価データが、京都産業・甲南・龍谷の3法人で揃わないことが理由です(近畿の運用状況は関西5法人の比較記事で取り上げています)。
- 億円表記は四捨五入、比率は小数第1位です。
