令和7(2025)年4月1日、改正された学校法人会計基準が施行されました。これは令和5年の私立学校法改正に伴うもので、会計・経理・財務の実務に少なからぬ影響があります。本記事では、学校法人の財務・会計部署で10年以上働く筆者が、改正の要点を実務担当者向けに整理します。なお、断定的な記述は文部科学省の一次資料に基づいています。
この記事でわかることは以下のとおりです。
- いつ・どの省令で改正されたのか
- なぜ改正されたのか(根拠法と目的の変更)
- 実務に効く主な変更点(セグメント情報の開示など)
- 令和7年度決算での対応と、改正に至った検討会の経緯
改正の全体像(いつ・何が変わったか)
今回の改正は、「学校法人会計基準の一部を改正する省令(令和6年文部科学省令第28号)」によるものです。令和6(2024)年9月30日に公布され、令和7(2025)年4月1日から施行されました。施行日以後に開始する会計年度、すなわち令和7年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)の計算書類から適用されます。
あわせて、私立学校振興助成法施行規則(令和6年文部科学省令第29号)の整備や、令和7年3月27日付の通知「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成等について」(6高私参第27号)など、実務に直結する文書が順次発出されています。
なぜ改正されたのか:根拠法と目的の変更
今回の改正の背景にあるのは、令和5年の私立学校法改正です。これにより、学校法人会計基準の根拠法が「私立学校振興助成法」から「私立学校法」へと移りました。これは単なる条文の引っ越しではなく、会計基準の目的そのものの位置づけが変わったことを意味します。
従来の学校法人会計基準は、私立学校振興助成法に根拠を置き、その目的は主に「補助金の適正な配分」にありました。適用対象も経常費補助を受ける学校法人が中心でした。改正後は、根拠が私立学校法に位置づけられ、目的が「ステークホルダーへの情報開示」を主眼とするものへと転換しています。
(第14条)
主な対象:経常費補助を受ける法人
広く学校法人全体へ
この考え方は、改正の検討段階でも事務局から明確に示されていました。
現行の学校法人会計基準は,(中略)私立学校振興助成法の中に根拠を置いておりまして,その目的も補助金の適正配分が主な目的となっております。(中略)こちらが私学法の改正によりまして,会計基準の根拠が私立学校法に位置づけられるという形になります。それに伴いまして,会計基準の目的も,補助金の適正配分というだけではなく,ステークホルダーへの情報開示が主な目的になってくる(後略)
学校法人会計基準の在り方に関する検討会(令和5年度)第1回 議事録より
実務に効く主な変更点
セグメント情報の開示
情報開示を主目的とする方針を反映し、計算書類においてセグメント(学校・附属施設等の部門)別の情報を表示することが今回の改正の柱の一つとなりました。どの単位で、どの範囲まで開示するか、その配分基準をどうするかといった論点は、後述の検討会で重ねて議論されてきたものです。
具体的な様式・記載方法は、文部科学省の通知(令和7年3月27日付)や説明資料に沿って確認するのが確実です。自法人の設置校・附属施設の構成に応じて、どのセグメント区分で表示するかを早めに整理しておくとよいでしょう。
配分基準として「経済実体をより適切に表す配分基準」とありますが、令和7年度と令和8年度の計算書類では「資金収支内訳表の配分基準」も使えることになっています。
「資金収支内訳表の配分基準」は「資金収支内訳表等の部門別計上及び配分について」(昭和55年11月4日文管企第250号文部省管理局長通知)にあります。
子法人に関する監査・把握
改正私立学校法では「子法人」という概念が新たに位置づけられました。子法人とは、学校法人がその経営を支配している法人として文部科学省令で定めるものをいいます。学校法人本体だけでなく、その支配下にある法人も含めて財務の透明性を確保しようという趣旨です。
これに伴い、監事の権限が子法人にも及ぶようになりました。改正私立学校法第53条第2項では、監事は職務上必要があるときに、子法人に対して事業の報告を求め、又はその業務及び財産の状況を調査することができるとされています。
監事は、その職務を行うため必要があるときは、当該学校法人の子法人に対して事業の報告を求め、又はその子法人の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
私立学校法 第53条第2項(出典:文部科学省「私立学校法の一部を改正する法律等の施行について(通知)」)
会計・財務の実務としては、まず自法人に子法人に該当する法人がないかを確認し、該当があれば監査や情報把握の対象として位置づけておく必要があります。
なお、労働組合、健康保険組合、生協は含まれないということで通知が出ました。(出典:「私立学校法施行規則の一部を改正する省令の公布について」7文科高第2039号)
計算書類の作成根拠・期限・監査の範囲
会計基準そのものの改正とあわせて、私立学校法の改正によって計算書類まわりの取り扱いも変わりました。計算書類の作成根拠が私立学校法に移ったほか、作成・報告の期限や、財産目録など監査・承認の対象範囲にも見直しが入っています。この点は会計・決算スケジュールに直結するため、別記事で詳しく整理しています。
私立学校法改正の会計・決算面の詳細は、こちらの記事も合わせてご覧ください。

また、改正後の計算書類のとじ込み順序については、こちらで具体的に解説しています。

令和7年度決算での実務対応
改正会計基準が初めて適用されるのは令和7年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)の決算です。その計算書類の作成は、まさに今(令和8年6月末の期限に向けて)各法人で進められているところです。施行後はじめての適用となるため、前年度の様式をそのまま流用するのではなく、改正後の様式・記載に沿っているかを必ず確認する必要があります。
- セグメント情報の表示区分を自法人の構成に合わせて整理する
- 令和7年3月27日付の通知・文部科学省の説明資料に沿って様式を確認する
- 作成・承認・監査のスケジュールを改正後の枠組みで組み直す
改正に至った経緯(検討会)
今回の改正は、「学校法人会計基準の在り方に関する検討会」での議論を経て形になりました。令和5年度の検討会での議論が報告書(令和6年1月31日とりまとめ)に結実し、それを踏まえて改正省令が公布・施行されています。さらに、セグメント情報の配分基準など残された諸課題については、令和6年度の検討会(第1回 令和6年8月8日、第2回 令和7年2月18日)で引き続き議論されています。
令和5年度の検討会で何が議論されたのか、その中身は以下の記事にまとめています。合わせてご覧ください。

まとめ
今回の改正のポイントを改めて整理すると、次のとおりです。
- 令和6年文部科学省令第28号で改正(令和6年9月30日公布・令和7年4月1日施行、令和7年度決算から適用)
- 根拠法が私立学校振興助成法から私立学校法へ。目的は補助金配分から情報開示中心へ
- セグメント情報の開示が柱。様式は令和7年3月27日付通知に沿って確認
- 「子法人」概念の新設により、監事の調査権が子法人にも及ぶ(改正私立学校法第53条第2項)
学校法人会計基準そのものの全体像(計算書類の種類や見方、基本金・特定資産など)は、以下の記事で網羅的に解説しています。合わせてご覧ください。

