大学職員でも大手企業から内定はもらえる:それでも辞退した理由

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はじめに

以前、私は転職活動をしたことがあります。結果から言うと、大手企業から内定をもらいながら、最終的にそれを辞退して現職にとどまる選択をしました。

「内定が出たのに、なぜ辞退したのか?」
「そもそも、なぜ転職活動を始めたのか?」

この記事では、私自身の転職活動を振り返りながら、その過程で得た気づきや、これから動こうとしている方へのアドバイスをまとめます。大規模な学校法人の経理・財務部署で働く事務職員という、少しニッチな立場からの体験談ですが、業界を問わず共通する部分も多いはずです。

転職活動の流れと意思決定を示す5ステップの概念図

きっかけは「昇格試験」と、納得のいかないフィードバック

転職活動を始めた直接のきっかけは、昇格試験に落ちたことでした。

翌年に再挑戦して無事に合格したのですが、引っかかったのは前年の不合格時にもらったフィードバックの内容です。

面接で「将来的にどんな管理職になりたいか」と問われ、私はこう答えました。

部下の意見に耳を傾けるサーバントリーダーシップを目指しています

ところがフィードバックは「自分で決断できない可能性がある」というものでした。

正直、これには納得がいきませんでした。

私がサーバントリーダーシップを志向するようになったのは、過去に自分の判断だけで物事を進め、同僚から反発を受けた経験があったからです。その反省から「まず周囲の声を聞く」という姿勢を大切にするようになりました。むしろ私は普段から「やる・やらない、どちらかのポジションを明確に取る」ことを心がけているタイプです。

つまり「決断できない」のではなく、「あえて聞く姿勢を選んでいる」のです。その背景まで汲み取ってもらえなかったことに、モヤモヤが残りました。

そして同時に、もっと根本的な問いが頭をもたげてきました。

「このまま一つの組織だけで働き続けて、本当にいいのだろうか?」

この漠然とした不安が、私を転職活動へと向かわせたのです。

どんな求人を受けたのか

転職活動の軸はシンプルでした。自分の経験を素直に活かせる方向で考えました。

現職では経理・財務の経験が長く、加えてシステム更改プロジェクトにも携わってきました。そこで、応募先は次の3方向に絞りました。

  • 大学・教育業界(現職の延長線上にある専門性を活かす)
  • 事業会社の経理(一般企業で経理パーソンとして通用するか試す)
  • 公共・大学向けコンサルティング(専門知識を別の形で活かす)

自分のキャリアの「軸」を持っておくことは、応募先選びでも面接での一貫性でも、後々効いてくると感じました。

選考の振り返り ── 連敗から内定まで

転職活動は、最初からうまくいったわけではありません。むしろ序盤は連敗でした。

1社目:大手監査法人系コンサルティング会社

初めて受けたのは、大学向けコンサルティングのポジションでした(会計士ではなく、コンサルタント職)。

書類選考は通過したものの、一次面接で落ちました。正直、手応えもあまりありませんでした。初めての転職面接で、自分の経験を外部の人に伝わる形で語れていなかったのだと思います。

2社目:ナレッジプラットフォーム系ベンチャー

次に受けたのも、面接で落ちました。

おそらく、これまでの経験と志望動機の一貫性、そして論理のつながりが弱かったのだと思います。「なぜこの会社なのか」を、自分の経験と結びつけて語りきれていなかったのでしょう。

3社目:大手EC企業の経理部門

そして3社目。ここで内定をいただくことができました。

成功要因は、ひとつではありませんでした。振り返ると、いくつかの要素が噛み合った結果だったと思います。

まず、大学での経理・財務の経験そのものが土台になりました。組織の規模が大きいぶん扱う金額や処理の幅も広く、その実務経験は民間企業でも通用するものでした。

加えて、民間企業を意識した会計の勉強と考え方を持っていたことも効いたと感じます。学校法人会計の枠にとどまらず、一般企業の会計や財務の視点を意識的に学んでいたことで、面接でも相手の土俵に乗った会話ができました。

そして、当時から生成AIに強い関心を持ち、業務での活用を構想していた点も評価されたように思います。面接でその考えを話したところ、関心を持って受け止めてもらえました。これからの時代に必要とされる視点を持っていることを示せたのかもしれません。

もちろん、「面接への慣れ」も無視できません。1社目・2社目で痛い目を見たことで、自分の経験の伝え方、志望動機の組み立て方が格段に改善されていました。転職活動は場数を踏むほど上達する。これは身をもって実感したことです。

最後に、これは相手側の要因でもありますが、面接官の方々の雰囲気が和やかだったことも大きかったです。終始リラックスした空気の中で、私の話にしっかりと耳を傾けてくれました。話しやすい環境だったからこそ、自分の考えを過不足なく伝えられたのだと思います。

「大学職員は潰しが効かない」は本当か?

ここで、ひとつ触れておきたいことがあります。

インターネット上では

大学職員は潰しが効かない

民間企業には転職できない

といった言説をよく見かけます。確かに大学という組織は独特の慣習や専門性があり、そう思われがちなのかもしれません。

しかし、少なくとも私は民間の大手企業から内定をもらうことができました

もちろん、これは私一人の経験であり、サンプル数で言えば N=1 にすぎません。すべての大学職員に当てはまる話ではないでしょう。それでも、「大学職員だから民間には行けない」という思い込みが、必ずしも正しいわけではないことは、自分自身をもって証明できたと思っています。

大切なのは、自分の経験を「大学という文脈」から切り離して、外部の人にも伝わる形で語れるかどうか。そこさえクリアできれば、道は開けるはずです。

なぜ内定を辞退したのか

内定が出た。年収も悪くない。それでも私は辞退しました。

決め手になったのは、自分の人生の優先順位でした。

これからの人生を考えたとき、私にとって一番大切なのは「家族との時間を取れること」「子どもの成長を見届けられること」でした。

部署の課員に代わりはいても、子どもから見て親の代わりはいない。

この言葉に、すべてが集約されています。

冷静に条件を比較しても、辞退という結論を後押しする材料がそろっていました。

判断軸現職にとどまる場合内定先に転職する場合
年収昇格していたためほぼ同水準現職とほぼ同水準
残業現部署は多いが、社内には残業の少ない部署もあり選択肢が残っている不確定(読み切れない)
通勤既存どおりオフィスが遠く大幅に増加
家族との時間確保しやすい通勤増で削られるリスク
現職と内定先を、自分の優先順位で並べてみた整理

転職によって得られるものと、失うもの。天秤にかけたとき、私にとっては「今の生活で守れているもの」の価値が勝ったのです。

ちなみに行動経済学を学んだ身として、この判断には現状維持バイアス保有効果が働いた可能性も認識しています。「すでに持っている現職」を手放したくない心理が、辞退の判断を後押しした側面はあったかもしれません。それでも、そうしたバイアスを差し引いて考えても、「家族との時間」を優先するという結論は変わらない、と自分の中で整理がついています。

「家族との時間」をここまで強く優先するに至った私自身の原体験については、後述する有料note版で掘り下げています。

転職活動を経て、変わったこと

「結局、転職しなかったなら意味がなかったのでは?」

そう思われるかもしれません。でも、私の答えは明確に「No」です。転職活動をしたことで、確実に変わったことがあります。

マインドセットが軽くなった

一番大きいのは、働き方に対する気持ちが軽くなったことです。

最悪、転職すればどこかが雇ってくれるだろう

実際に内定を得たという事実は、こうした心の余裕を生んでくれました。今の組織にしがみつくしかない、という感覚から解放されたのです。

現職での役割が広がった

残業が多いのは相変わらずですが、現部署での経験がさらに積み重なり、取りまとめ役のような立場を担う場面も増えました。

転職活動を通じて自分のキャリアを見つめ直したことが、結果的に「今の場所での動き方」をも前向きに変えてくれたのだと思います。

これから転職活動をする人へ ── やっておいてよかったこと

最後に、私の経験から「これはやっておいてよかった」と思うことを共有します。

① キャリア(経験)の棚卸し

自分の経験は、思っている以上に「忘れている」ものです。改めて棚卸ししてみると、面接で語れるネタは意外とたくさん見つかります。これは転職するしないにかかわらず、定期的にやる価値があります。

② 資格で「最低限の知識」を客観的に証明する

転職活動を通じて感じたのは、専門外の相手にも自分のバックグラウンドを伝えるには、資格という客観的な証拠が効くということでした。私の場合は、会計系の資格と英語が両輪になりました。

会計系資格(FPと簿記)でバックグラウンドを示す

FP(ファイナンシャル・プランニング技能士)・簿記をはじめとする会計まわりの資格は、「最低限の会計的バックグラウンドがある」ことを客観的に証明してくれます。学校法人会計という独特の文脈の中だけにいると、外部の人にはなかなか自分の専門性が伝わりません。資格があると、その壁を一段下げてくれました。

学校法人職員にとっての具体的な資格選びについては、別記事「学校法人職員におすすめの資格3選:簿記・FP・TOEIC」でまとめていますので、合わせてご覧ください。

英語(TOEIC920点)で「英語業務もできる」を示す

TOEICで920点を取っておいたことも、確実にプラスに働きました。特に内定をいただいた企業は英語を使う環境だったため、語学力が評価対象になりました。コツコツ続けてきたオンライン英会話の積み重ねが、ここで効いてきた形です。

大学職員という仕事で英語がどう求められるかは、別記事「大学職員に求められる英語力と最短で英語対応する方法」で整理しています。

③ 生成AIで、バラバラだった自分の価値観を一本につなげる

これは個人的に、転職活動を通じて得た最大の収穫でした。

最初、私は「生成AIを使って、自分の経験を外部の人に伝わる言葉に翻訳できるようになった」と考えていました。学校法人の財務という仕事は、一般の事業会社の人にはなかなか伝わりにくいので、その「翻訳作業」に生成AIが役立ったのは事実です。

でも、本当に大きかったのはその一歩先でした。

それまでの私は、自分の経験や考え方、価値観が、頭の中でバラバラに散らばっている状態でした。「なぜ今の仕事をしているのか」「何を大切にしているのか」「これからどうなりたいのか」――一つひとつは持っていても、それらが一本の筋として論理的につながっていなかったのです。

生成AIと対話しながら自分の考えを言語化していくうちに、バラバラだった点と点が、一本の線につながっていく感覚がありました。過去の経験が今の価値観にどうつながり、それが将来のキャリア観にどう結びつくのか。その論理の筋道が、自分の中でくっきりと見えるようになったのです。

これは面接で語る言葉に一貫性をもたらしただけでなく、転職するかどうかの判断軸そのものを明確にしてくれました。

生成AIを実務で使い込む感覚については、別記事「大学職員がClaude Codeを使って感じた「今はまだ早い、でも避けられない」という確信」もあわせてご覧ください。

専門性が高い仕事をしている人ほど、自分の考えを整理し、論理的につなげる作業は重要だと思います。その壁打ち相手として、生成AIは非常に強力でした。

おわりに

転職活動の結果、私は現職に残りました。でもそれは「動けなかった」のではなく、「比較したうえで、今の選択を能動的に選んだ」結果です。

内定を辞退したことに、後悔はありません。むしろ転職活動を通じて、自分の価値観、自分の市場価値、そして自分が本当に大切にしたいものが、くっきりと見えるようになりました。

転職するかどうか迷っている方へ。たとえ最終的に動かなかったとしても、転職活動そのものに大きな価値があります。一度、自分のキャリアと人生を棚卸ししてみてはいかがでしょうか。

より具体的な体験は有料note版で

この記事ではブログ記事での公開という性質上、固有のエピソードや面接の中身までは伏せました。下記のような踏み込んだ内容は、有料noteにまとめています。

  • 昇格試験で起きた「価値観のズレ」の詳細
  • 1〜3社目それぞれの会社の業種と落選分析(個別企業名はありません)
  • 辞退の伝え方(転職エージェント経由で辞退と年収交渉を楽にした話)
  • 「家族との時間」を最優先するに至った私の原体験
  • 生成AIで価値観を整理した実プロセス(ChatGPTメモリ機能の活用、プロンプト例)
  • 転職活動を経て現職で動きが変わった話

note版「大学職員の転職活動 完全版」を読む

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今回の話と関係する、現職での働き方・お金まわりの記事もご覧ください。

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この記事を書いた人

経理・財務が10年以上の大学職員です。

資格:簿記2級、FP2級、TOEIC L&R 920点
投資年数:10年以上
投資対象:投資信託(主にインデックス投資)、暗号資産、米国株

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