今回の本は、非常に所属大学の(というか上司の)投資スタンスに似ていて、仕事に役立ったのでご紹介します。
感想
タイトルの通り、ETFとREITのことが書いてあるのはもちろん、仕組債や仕組預金など巷でよく出てくる(けど、複雑でリスクの所在がわかりにくい)金融商品のことが説明されて非常によかったです。ETFとREITの具体的な銘柄も載っていて面白かったですね。(実際に購入するかは別として)
ただ私は、個人投資家として債券投資をするのは旨味が少ないと感じています。少し逸れますが、前に米ドル建ての劣後債(金融機関発行、残存9年)をSBI証券で購入したのですが、売却単価を見てみるとと驚くほど安かったです。単価で8〜9%くらい下がるんですよ。時価との乖離ありすぎでしょう。クーポンが3%でアンダーパーで買ったので満期まで保有予定ですが、ちょっと次は無いなーと思っています。
他の金融機関で買ってれば、売却単価がもっとマシなんでしょうかね。(例えばN證券とか)
内容まとめ・抜粋———————————————-
サブプライムの流れ
・低所得者に家のローンを貸し付けたのが始まり。時給10ドル(1100円くらい)の人が70万ドル(7700万円くらい)の家を買ったりしていた。
・当時の米国は、住宅価格の値上がり、給与の値上がりを前提とした返済方法が採用されていた。
→ネガティブ・アモチゼーション:この住宅ローンでは元金を返さず、生じる利息よりもローン返済額が少ないため、毎月ローンが増える状態。物件のキャピタルゲインを当てにしている。
国債発行と量的緩和で通貨発行する違い
・前者は市中のお金の総量は変わらない。(国債を発行して、それをキャッシュで買うため)
・後者は通貨を発行するので、お金の総量が増える
債券投資
・重要なのは米国10年金利。これがよく基準になる(リスクフリーレート)
・日本国債のデフォルトは今のところない(発行済み国債の9割が日本国内の機関投資が持っているので、家族の中で父親が娘から借金しているようなもの。プライマリー・バランスの恒常的な赤字は5日コントロールできなくなるが、最悪個人の金融資産、不動産への増税という方法もなくはない)
・外貨建て投資は国債(リスクフリーレート)との金利差(スプレッド)を考える。
トルコで12%利回りの不動産があっても、預金が10%の金利なら、スプレッドは200bp(2%)しかない。
・利回りを見るならIRRを考えるとよい。
為替
・変動の理論として一般的なのは2つ。購買力平価説と金利平価説。
購買力平価:同じモノは同じ値段(価値)になるという考え方で、よくビックマック指数として例えられる。ビックマックが日本で300円、アメリカで3ドルなら100円=1ドルだが、インフレによって日本で500円となると、500円=3ドル→166円=1ドルという円安になる。
金利平価:トルコリラなどの高金利通貨は日本円のように金利の低い通貨に対して、毎年金利差分だけ弱くなる傾向があるという考え方。日本円で0.1%の利子、トルコリラで10%の利子で、為替の変動が無いとしたら、皆がトルコリラで預金をし、日本円に戻したほうがお得。このような取引は裁定の考え方で塞がれるのが市場の原理なので、トルコリラは1年後には金利差分下落し、日本円とトルコリラのどちらで預金しても利益は変わらないはず、という考え方。
FX
・FX業者と個人との戦い。業者が、個人の逆指値注文まで動かしたり、スプレッドをひらくようにして、損失を確定させることがある。最近はなくなってきている。
その他
・コーラブル預金(仕組預金)はダメ(個人のうまみは無い)
・デュアルカレンシー預金もダメ。
・FXファンドもダメ。
・やけに高金利だったり、安全なのに高金利というのは、「誘うなら自分だけそれでやればよいじゃん」ということになるので怪しい。
インカムゲインの源泉
・債券やローンの金利
・不動産賃料や事業経営からの収益分配
・オプションの売り
これら3つのみ!!
REIT
・解散価値であるNAVが重要。
Net Asset Value(NAV):保有している物件をすべて売却し、借入金を返済したときの残りの資金
・あとはLoan to Value(LTV)とNet Operating Incom(NOI)利回りが重要。
前者は借入金の比率であり、少ないほうが健全。ただレバレッジがきいていないということもできる。
後者は保有している物件からどれだけ賃料(から経費を引いた利益)を得られているかというNOIとそれを不動産取得価格で割ったのがNOI利回り。
・REITはWebを見れば保有物件や借入金など重要な情報が公開されている。(分配金が高いからというだけで選んではいけない)
・REITは株式市場に連動する。→株の損失をJ-REITを売って埋めたりする。
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以上、内容のまとめでした。
機関投資家で仕事をしている人としては常識かもしれませんが、運用担当初心者や、個人投資家としてはとても勉強になるのではないでしょうか。こういったことを考えていたほうが金融機関の手数料が高い商品に騙されなくて得をしますよね。