今回は大学の資産運用の目的のお話です。
前回の記事はこちら
前回に続き、私立大学で資産運用をしていた経験から書きます。
さて、なぜ(何のために)運用しているのかといえば、当然ながら運用益を得る、財務のためですね。
それをもう少し詳しく言うと、「特定資産のため」「主に第3号基本金のため」となります。
特定資産と基本金とは
特定資産(以前は特定目的引当資産とも言った)は、貸借対照表の左側(資産の部)にあり、代表的なものとして、第2号基本金引当特定資産、第3号基本金引当特定資産や、退職給与引当特定資産などがあります。
第2号基本金は将来の固定資産の取得に向けてのお金、第3号基本金は基金のお金、退職給与引当特定資産は教職員の退職金支払いに備えて確保しておく資産です。
私立大学は、規程の定めによって多少違うかもしれませんが、これらのお金を運用しています。教育研究に特に大きいのは第3号基本金だと思います。
第3号基本金の中には、それぞれ目的の細分化された基金があり、運用益を使って事業を行います。奨学基金や研究基金などが代表例です。
参考:文科省 基本金の定義
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/001/002/004/001.htm
基金は、寄付や大学の経常費から組み入れられた、巨大なお金の塊というのようなもの(イメージ)です。その元金は永続的に保持され、事業の廃止など、よほどの理由がない限りは取り崩されません。(取り崩せません)
元金は保持したまま、運用益で事業を行うので、毎年(というか永続的に)続けられるのです。
例えば学納金などの収入が減っても、その年の経常収入から捻出する奨学金や研究費とは違うので安定的です。
(もちろん、資産運用が予定どおりの運用益を生まないと事業の規模は変わりますが)
アメリカの大学のエンダウメントを参考にして、第3号基本金(基金)を増やそうとしている私立大学もあり、今後大学により差が出てくるかもしれません。
参考:ニュースイッチ
https://newswitch.jp/p/10097?from=np
特定資産ごとに「運用の温度感」は違う
同じ特定資産でも、目的によって運用のスタンスは変わります。私が担当していたときの感覚も交えると、おおむね次のような違いがありました。
- 第3号基本金引当特定資産……運用益で奨学金や研究費といった事業を回すのが前提のお金です。元本は取り崩さないのが原則なので、長期目線で運用益を狙えます。運用の主役といえる存在です。
- 第2号基本金引当特定資産……将来の校舎建設など、固定資産の取得に向けて積み立てているお金です。使う時期がある程度決まっているので、満期や償還時期を意識した安全運用が中心になります。
- 退職給与引当特定資産……教職員の退職金支払いに備えるお金です。いつ・いくら支払いが発生するか読みにくいぶん、すぐ換金できる流動性を重視します。
このように、「運用益を使う前提のお金(第3号基本金)」と「使う時期が決まっているお金(第2号基本金や退職給与)」では、リスクの取り方が自然と変わってきます。第3号基本金が教育研究にとって特に大きい、と前述したのはこのためです。
改正会計基準でも基本金の枠組みは維持される
令和7年4月施行の改正学校法人会計基準でも、第1号〜第4号基本金という枠組み自体は維持されています。資産運用の出口である基本金・特定資産の理解は、会計基準とあわせて押さえておくと実務で役立ちます。会計基準の全体像は「学校法人会計基準の完全ガイド」、基本金の詳細は「学校法人の基本金とは」、資産運用の全体像は「私立大学の資産運用」をあわせてご覧ください。
