生成AI、特にChat GPTの登場は、テクノロジーの世界におけるパラダイムシフトとして注目されています。2022年11月30日にサービスが開始されて以来、わずか5日間で100万ユーザーを突破し、その影響力は業務、教育、日常生活にまで及んでいます。
また2024年5月にはGPT-4oという新しいモデルも発表され、生成AI界隈で盛り上がりを見せています。
本記事では、生成AIの概念、Chat GPTの特徴、利用シーン、課題、そして今後の展望について、私の経験と参考書籍をもとに解説していきます。
生成AIとは、Chat GPTとは
生成AIは、人工知能が大量のデータを学習し、新しいコンテンツを生成する技術です。
その中でも、Chat GPTはGenerative Pre-trained Transformerの略で、与えられた文字列に基づいて、続く文字列を確率的に予測しているものです。この技術は、自然言語処理の分野で特に進歩が目覚ましく、人間との対話を模倣することで、多様な応用が可能になっています。
GPTは簡単に言うと、「ある文字列が与えられたら、続く文字列を生成する変換器」です。
清水亮(2023)教養としての生成AI
利用のユースケース
Chat GPTの利用シーンは多岐にわたります。例えば、ビジネス文書の作成、顧客サービスでのFAQ応答、プログラミングのコード生成、創作活動でのアイデア出し、教育分野での質問応答などが挙げられます。
私も、日頃の業務で、日英の翻訳の下書きをChat GPTもしくはPerplexity Pro(言語モデルはClaude 3 Opus)を使っています。もちろん、自分でも内容を読んでみて、意味が通るかなどは見ますが、日英翻訳については、問題ないレベルと思っています。私より翻訳能力高いし、後述するハルシネーション(幻覚)の問題も起きにくいです。
また、マーケティングや広告の分野では、ターゲットに合わせたコンテンツの自動生成にも利用されています。
Open AIは絶えずサービスのアップデートをしているので、使える領域はどんどん増えてくるものと思われます。
ぱっと思いつくのは、生成AIをチューニングして、会社ごと大学ごとに独自の知識をもたせた生成AIが、問い合わせ対応をすることもでてくるでしょう。
生成AIを利用したサービス
生成AIを利用した新しいサービスも続々と出てきています。「note」ではnote AIアシスタントでは記事作成をアシスタントしてくれます。
SEO対策も含めた記事制作もできる「Jasper」というサービスもあります。(月額39ドルから。生成文章の単語数上限によって料金異なる。)
「Catchy」も似たサービスで、様々な記事作成の手伝いをしてくれます。(月額3,000円から)
プレゼン資料のスライド作成には「Sendsteps」というものがあります。特定企業の製品紹介のような公開情報が少ない分野には向きませんが、一般的なテーマであればかなり良い精度のようです。
これらを大学のレポートなどで使用されることはあり得ることでしょう。
課題
様々な書籍でも言われていることですが、課題は以下になります。
- ハルシネーション(幻覚)といって、実在しない情報をあたかも本当のことのように回答する
- 算数・数学の計算は苦手
実際私も使ってみていますが、Chat GPT PlusでのGPT-4やPerplexity ProでのClaude 3 Opusを使ってみてもハルシネーションという問題は(少なくなったとはいえ)あります。
2つ目の算数・数学的な計算が苦手という問題ですが、これは結構解消されつつあるように感じます。
大学生のChat GPT利用
学生側については早くから、Chat GPTを利用していると思われます。統計的なデータはわかりませんが、簡単に課題・レポートを進められるツールが登場したら、要領がいい人ほど使うでしょう。
これについては文科省や大学側も認識していて、各大学(各教員)で対応を日々検討していると思われます。
声明を出す大学も
東京大学、東北大学など様々な大学がChat GPTなどの生成AIの利用について声明を出しました。
カンニングと同様、厳正な対応をするというところもありますが、「資料持ち込み可」の試験のように教員が認めた場合は生成AIの利用もOKとする大学もあります。
個人的な雑感としてはそのような大学が増える(というか実質的にはそうなる)と思います。ペーパーテストや口頭試問など、電子機器に触っていない状態であれば生成AIを利用していないことを確認できますが、レポートや論文などでは教室外で執筆をする以上、本人が使おうと思えば使えてしまいます。
また難しいのは論文やレポート作成において何割が人間が作成した部分で、何割がChat GPTが作成した部分かという判断です。
草案をChat GPTに作ってもらって学生が直して作り上げた場合や、学生が自力で草案を作り、それをChat GPTが添削した場合などです。これは、どのくらいからがアウトとなるのかが非常に難しいと思います。
Chat GPTなどの生成AIは同じプロンプトを入力しても、同じ出力(全く同じ文言)は返ってこないようになっています。その意味で、完全な再現性がないので、Chat GPTを使った不正行為だと証明するのも困難です。
今後の展望(予想・妄想)
今後、必ずといっていいほど高い確率で、生成AIは生活で必ず関わるものになります。ホワイトカラーの仕事では、生成AIサービスを利用することが必須になるでしょう。Google検索で調べたいことを探すのではなく、生成AIに質問して概要を把握し、参照元のURLなどにあたるようになると思われます。
生成AIは、これから「破壊的イノベーション」を引き起こすことになるでしょう。
白辺陽(2023)生成AI 社会を激変させるAIの創造力
白辺陽(2023)生成AI 社会を激変させるAIの創造力
何かを「記憶している」ということや、ある作業を「正確に実行する」ということは、昔に比べてそれほど重要ではありません。
それよりも、様々な道具を駆使して付加価値の高いものを「作り上げる」ことや、複雑な物事の中から「判断する」ということが重要になっているのです。
そのため、Chat GPTをはじめとする「生成AIを使う能力」「極力定量的なプロンプト(命令)を考える能力」は重要になっていきます。生成AIが発展すれば、行間を読むような深い理解もしてくれるかもしれませんが、現段階では新入社員に指示するときのように、極力定量的にわかりやすくプロンプトを入れる必要があります。
Chat GPTをはじめとする生成AIは、私たちの仕事や学び、日常生活に革命をもたらす可能性を秘めています。しかし、その利用には課題もあり、これらを克服しながら、生成AIのポテンシャルを最大限に活かすことが求められます。今後の技術進化とともに、生成AIの利用範囲はさらに広がり、その影響力は計り知れないものになるでしょう。
参考文献
今回以下の書籍を参考文献として読みました。書籍というと出版までに時間が掛かる分、「情報の鮮度」としてはネットの情報に劣りますが、「情報の質」「信憑性」という点では、出版社や著者がオーソライズしていますので高いと考えています。
生成AIについて全般的な基礎知識を得たい人にはおすすめです。