前回、大学の資産運用における債券投資について書きました。

今回は、その延長で「スプレッド」について説明します。
スプレッドとは、上乗せ金利のことです。例えば、事業会社や金融機関が債券を発行するとき、基準金利(金利スワップレート等)+スプレッド(上乗せ金利)でクーポン(利率)が決まります。
スプレッドの単位はbp(ベーシスポイント)を使うことが多いです。100bp=1%です。
例えば、私が運用担当をしていた頃、60年債で、10年後にファーストコールとなる円建ての劣後債(劣後債の説明は前回記事「大学の運用で投資している債券とは」参照)で、債券格付JCR A-のものであれば、80bp(0.8%)くらいスプレッドが乗っていることがありました。
たしかこの時は、基準金利0.23%+スプレッド0.8%ということで、クーポン1.03%になりました。
なお、この基準金利0.23%は低金利期(2020年前後)の水準です。2026年7月22日時点では10年国債利回りが2.745%まで上昇していますから、仮に同じ80bpのスプレッドが乗れば、単純計算でクーポンは3%台半ばになる水準感です。土台となる基準金利が動いても、「基準金利+スプレッド」という分解の仕方は変わりません。
数値例でみるクーポンの決まり方
先ほどの例を表に整理すると、クーポン(表面利率)がどう決まるのかが分かりやすくなります。
| 項目 | 利率の例 |
|---|---|
| 基準金利(10年スワップレート等) | 0.23% |
| + スプレッド(JCR A−の劣後債) | 0.80%(80bp) |
| = クーポン(表面利率) | 1.03% |
スプレッドは「リスクの対価」です。発行体の信用力が低いほど(格付が低いほど)、また流動性が低いほど、投資家が求める上乗せ金利は大きくなります。劣後債のように弁済順位が普通社債より後回しになる債券も、その分スプレッドが乗ります。
格付が低いなどリスクの高い債券ほどスプレッドは乗ります。私の頃は、格付A-以上円建ての債券だと70〜80bp、同外貨建て債券だと100bpくらいスプレッドが乗るものを一つの基準にしていました。
(参考:PIMCO)
スプレッドとは
債券の利回りは2つの部分に分解することができます。ベース金利と、 ベース金利に上乗せされる金利(スプレッド)です。
PIMCO 債券の基礎 https://www.pimco.com/jp/ja/resources/education/bond-basic/fixed-income-1/what-is-spread(2026年7月24日アクセス・URL移転を反映)
信用スプレッド
一部の国債を除いた全ての債券の利回りはスプレッドを含んでいま す。社債の利回りにはそれぞれの企業に関して見込まれる債務返済 能力に応じたスプレッドが上乗せされています。また、モーゲージ債な ど、証券化商品もスプレッドを持っています。また、スワップに関し ても、カウンターパーティーが取引不履行となるリスクに応じたスプ レッドが上乗せされます。国債でも、米ドル建て新興国国債など外 貨建てで発行される場合には、発行通貨の金利に対して信用スプ レッドが上乗せされます。
PIMCO 債券の基礎 https://www.pimco.com/jp/ja/resources/education/bond-basic/fixed-income-1/what-is-spread(2026年7月24日アクセス・URL移転を反映)
大学によっては、運用規程で外貨建て債券を制限している法人もあります。
その場合は、円建ての債券で少しでも多くの利回りが得られるよう、候補を探していくことになります。劣後債や、サムライ債(海外の発行体が日本市場で発行する円建て債券)、ユーロ円債(海外市場で発行される円建て債券)が候補となり得るかと思います。
また、既発債で、そっくり同じ債券(同じ発行体、同じクーポン、同じ償還日)を、2つの証券会社が売り込んでくることがありますが、その時は相見積もりのように、それぞれから条件を引き出して比較検討しましょう。
大学の運用でスプレッドをどう使うか
保守的な運用が基本の大学にとって、スプレッドは「取れるリスクの範囲で利回りを確保する」数少ないレバーです。だからこそ、やみくもに高いスプレッドを追うのではなく、許容できる格付の下限やスプレッドの目安を、運用規程や内規であらかじめ決めておくことをおすすめします。基準が言語化されていれば、担当者が代わっても判断がぶれませんし、証券会社との交渉でも軸を持って臨めます。


