大学の運用で投資している債券とは

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皆さんは、日本の私立大学の資産運用というと、どのような資産(アセット)を思い浮かべるでしょうか。株式でしょうか。

実は、その大半は債券によって運用されています。あまりイメージがわかない人が多いと思いますので、今回は、大学の運用で投資している債券について説明します。

目次

債券とは?

最も代表的なもので、皆さんのイメージつきやすいものは日本国債です。個人向け国債もあるので、わかりやすいですね。

これは、債券を買うことで、発行体である日本にお金を貸し、定期的にクーポン(利金)をもらいつつ、満期(償還日)が来たら、額面金額(単価100%)でお金が戻ってくるものです。

発行体が破綻しなければ、必ずお金が帰ってきます。

一般の会社が発行しているものは「社債」といいますね。

新発(新規発行)なら、単価100で発行され、クーポンの利率が、そのまま利回りとなることも多いですが、割引債やゼロクーポン債と呼ばれる、単価60とかで発行され、クーポンは出ない代わりに、単価100%(額面金額)で償還する債券もあります。

また既発債といって、相対で取引されるものもあります。こちらはその時の金利の状況で、単価100を超えていたり、下回っていたりします。

安全なのか?

債券は株式に比べれば比較的安全と言えます。なぜなら、発行体が潰れなければ単価100(額面金額)でお金が返ってくるからです。

弁済順位としても、株式より先になります。

株式は高い配当金が出る高配当株というものもありますが、買った金額で売れるかどうかはわかりません。(上がることも下がることもあります)

もちろん、債券であってもタカタのように、額面で返ってこない例もあります。逆に東芝のように首の皮が繋がる列もあります。

その辺はしっかり業績などの状況を調べて、破綻しないかをチェックすることが大事です。また発行体の格付を調べることも有用です。

債券を発行するような会社であれば、格付会社(JCR, Fitch, R&I, Moody’s, S&Pなど)が、会社の安全性について、格付付けています。ちゃんとした大学であれば、投資する債券は、A-(シングルAマイナスと読む)以上とか規程で定めているでしょう。

格付とデフォルト率(破綻率)については格付会社が調査しています。

(参考:日本の発行体におけるデフォルト率と格付遷移 1990 – 2019年)

https://www.moodys.com/sites/products/ProductAttachments/MoodysJapan/1226828.pdf

格付が高ければ、デフォルト率はとても低いということです。こういったデータからも格付を基準として債券を選ぶことには一定の合理性があります。

でも、今って低金利じゃないの?

これは最もな指摘です。今では日本国債10年金利は-0.09%とかです。つまり、満期まで持っていても、投資家が損する状態です。なので、日本国債には投資妙味は少ないですね。

(満期保有を目的としない部分ラダー運用というのもありますが、それの説明はまた今度にします。)

国債がイマイチなら何の債券を買えばいいのか

日本国債はあまり利回りが出ないので、ここ近年人気になったのが、「劣後債」です。初めは金融機関や、生損保が発行していましたが、今は事業会社も発行しています。ただ、それなりのリスクもあるので、一概にオススメするものではありません。

資産運用に比較的積極的な大学は劣後債に投資していることもありますが、債券は日本国債のみと規程でがっちり固めている大学もあるようです。

「劣後」という名の通り、この債券は弁済順位が劣後するのです。普通社債と株式の間、劣後債は両方の特性を持つ、「資本性証券」の一種です。

(参考:SMBC日興証券)

https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/si/J0695.html

劣後債のメリット/デメリット

劣後債は、普通社債よりもクーポン(利金)が高いです。例えば、私が運用担当をしていたとき、債券格付A-で60年ノンコール10(詳しくは後述)でクーポン1%を超えるものもありました。(最近のは知りません)

ただもちろん投資家にとってデメリットもあります。それは、償還までの最大年限が長いこと、最初のコール日で償還しない可能性があることです。劣後債には30年債、60年債や永久債もあります。投資家が買うのは最初のコール日(発行体が早期償還させることができる日)での償還を前提としているためです。

※コール(償還)するかどうかは発行体が決めます。

例えば、60年債で最初のコール日が10年後と設定された債券(60年ノンコール10)は、発行体の金融機関では一定の部分を自己資本として扱えます(自己資本規制の「資本」だったり、格付取得のため格付会社が考える「資本」だったり)。

(参考:楽天証券)

しかし、それが自己資本として扱えなくなる期間(例えば10年)がすぎ、市場の金利と比べて投資家に高いクーポンを払うメリットがなくなると、償還するのです。また債券によっては、金利のステップアップ条項がついています(初回のコール日に償還しない場合、クーポンを1%アップするとか)。ステップアップ条項があると償還の蓋然性は高くなりますね。

今のところ、最初のコール日(ファーストコール)で償還することが多いですが、これは絶対ではありません。実際、みずほFGの米ドル建て債券や、コメルツ銀行、スタンダードチャータード銀行の債券は、コール(早期償還)を見送ったことがあります。

劣後債のメリット・デメリットを簡単にまとめますと、以下のようになります。

投資家のメリット(発行体のデメリット)
→金利が高い

投資家のデメリット(発行体のメリット)
破綻時の弁済順位が低い。初回コール日で償還しないことがある。加えて、発行体は自己資本として扱えるのがメリット

また以下の記事(外部)もわかりやすくまとまっていますので、ご参考に読んでみるとよいでしょう。

(参考:THE GOLD ONLINE)

その他、以下のような記事も書いてますので、よろしければご覧ください。

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この記事を書いた人

経理・財務経験が6年程度の大学職員です。

資格:簿記2級、FP2級、TOEIC L&R 880点
投資年数:10年
投資経験:投資信託(インデックス投資)、米国ETF、トラリピ(FX自動売買)、トライオートETF(株価CFDの自動売買)、暗号資産(仮想通貨)

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