私立大学での経理・会計の仕事について、インターネットでは情報が少ないので、以下にざーっと書いてみます。大学職員への転職を勧める某サイトでは概算要求の話が書かれていましたが、私立大学は概算要求しませんしね!(そのサイトでも国公立大学での仕事と書かれています)
就職活動・転職活動で大学職員を目指す方の一助になれば幸いです。
まぁ大学職員になるのに、経理・会計を志望する人は少ないかもしれませんが。苦笑
財務の仕事については以下で記事にしていますので、よろしければこちらもどうぞ。
結論(まとめ)
結論としては大まかに以下のような業務があります。(大学によっては違う部署が担当のこともあるかもしれませんが、一例ということで)
- いわゆる伝票処理(振込・振替・入出金)
- 学費関係
- 収益事業関係の経理
- 預金残高と会計システムの整合チェック
- 予算関係
- 決算関係
- 省庁からの調査回答、新聞雑誌からの調査回答
- 監査対応・検査対応
以下で解説していきます。
いわゆる伝票処理(振込・振替・入出金)
最もオーソドックスなものですね。全ての会計処理で、伝票が最後に回ってくるのが経理・会計部署です。企業でも同じことをしていて、いわゆる「経理」「会計」というイメージの業務ですね。
適切な科目か、適切な予算からの支出か、金額は間違いないか、不適当な支出ではないか、証拠書類に不足はないか、等を確認します。
その上で、振込処理をしたり、予算の付け替えや科目の振替、現金の入出金をします。
多くの振込先に一度に振り込むには「総合振込」というもので処理します。(大規模大学は、振込先が少なくても総合振込かもしれませんが。
紙の振込用紙ではなく、電話回線だったり、インターネットだったりから振込をします。「FB(ファームバンキング)」「EB(エレクトロニックバンキング)」とかもいいます。新人職員とかでこれの処理を忘れるとなかなか悲惨です。その話もそのうち記事に書きたいですね。
「給与振込」も似たようなものです。誰にいくら払うのかというデータは人事部署で作りますので、経理・会計では振込を実行します。(通帳に「給与」と表示される振込はちょっと特別なのです)
学費
これは大学によって、学部・研究科ごとに行っていたりするかもしれません。口座引き落としの請求データを作ったり、学費振込用紙を発送したりします。
休学で学費を免除・減免する大学は、その反映も大変です。請求額を減らしたり後から返金したりする必要があるからです。
そして入金後は、誰が払っていて、誰が払っていないかをシステムに登録します。もちろんほとんどの部分はシステムで一気に行います。
収益事業の経理
大学職員として耳にする「収益事業」には、私学法上の収益事業と、法人税法上の収益事業という2つがあります。
私学法上の収益事業は、大学の寄付行為(企業でいう定款みたいなもの)で定めて、私学法にのっとった事業を行います。この事業では区分経理として、学校法人会計ではなく、企業会計と同じ「損益計算書」「貸借対照表」を作ります。
この損益計算書での「学校会計繰入金支出」が、学校法人会計の事業活動収支計算書の「収益事業収入」に対応しています。
税法上の収益事業は、私学法上の収益事業より少し広い範囲になります。私学法上の収益事業に当てはまらず、税法上の収益事業のみに当てはまるものは、学校法人会計の中で処理しています。税法上の収益事業からは法人税を払わねばなりません。
預金残高と会計システムの残高チェック
実際の預金残高(通帳や残高証明書)と、会計システム上の預金残高が合っているか確認します。入金の消込作業とかもこれと関連してますね。これは企業でも同じことしているはずです。これが毎月できていないと決算時に大変な思いをします。
予算関係いろいろ
各部署に予算策定を依頼して、取りまとめて、適宜部署と折衝して、予算書にまとめ上げるお仕事です。事業計画と連動している予算でないといけません。
予算は、ある程度コンサバに(手堅く)なることが多いです。私の大学も、他の大学も予算より決算のほうが数字がよくなっているのを見かけます。
決算関係いろいろ
会計年度末を過ぎたら、決算整理仕訳を入れて、いろいろ振替伝票を起票して、まとめて決算書にまとめ上げるかんたんなお仕事なかなかヘビーなお仕事です。
決算ってなんであんなに大変なんですかね。基本金の組入とか、特定資産への繰入支出・取崩収入とかが大変だった気がします。あとはいろいろな会議に諮って、決算書を何度もチェックしたり、貸借対照表の注記を買いたり、財産目録を作ったりとかですかね。
あとは、決算関係の業務をしつつも、この時期は4月とかなので、新しい年度が始まっているわけで、通常の伝票処理もあるんです。
4月5月は、残業が45時間超えるのがデフォルトでした。(私の能力不足だったのかもわかりませんが)
補助金関係の調査、新聞雑誌からの財務関係調査
文科省からいろいろ調査が来るのです。最重要なのは補助金に関わる調査です。大抵の私立大学は「経常費補助金」という補助金をもらっており、公費が投入されています。調査や報告書の回答に間違いがあって補助金が減っても困るし、かといって過大にもらってもまずいです。
新聞雑誌からの財務関係調査は、マスコミがよく作成する「□□新聞社 大学ランキング」「〇〇な大学一覧」みたいな特集に使われます。これは補助金には関係ありませんが、大学の評判につながるという点では結構重要かもしれません。
監査対応・検査対応
会計士の監査、監事の監査、会計検査院や税務署の検査、付属校・系列校があると都道府県の検査と、いろんなところから会計処理をチェックされます。その対応があります。それぞれの監査・検査で、先方の温度感が違うのですが、質問をされて、回答ができない・わからないときは不確かなことは答えず「確認して回答します」とするのが重要ですね。
最後に
以上、私が在籍していた経理・会計部署の業務でした。細かい部分は端折りましたのでそんな大変じゃなさそうですね。笑
おさらいとして再掲しますと以下の8つです。
- いわゆる伝票処理(振込・振替・入出金)
- 学費関係
- 収益事業関係の経理
- 預金残高と会計システムの整合チェック
- 予算関係
- 決算関係
- 省庁からの調査回答、新聞雑誌からの調査回答
- 監査対応・検査対応
経理・会計というのはお金に関する情報が集まってきますし、予算決算で学校法人全体のことも知ることができますので、非常に良い経験ができる部署だと思います。また予算書や決算書が出来上がると結構達成感があります。笑 なので私立大学職員であれば一度は経験してみると良いと思います。
経理・会計での仕事をやるにあたって何を勉強すればよいかは以下の記事もご覧ください。
また、学校法人会計基準についても以下でまとめていますので、よろしければご覧ください。