前回少しだけ触れた不動産投資、特に私募リート(REIT)について説明します。大学のような機関投資家の間で注目された商品です。
そもそも「REIT」とは何か
REIT(リート)は不動産投資信託のことです。簡単にいえば、不動産投資(賃貸経営)を証券化したものです。
通常の投資信託は、投資家から集めたお金で株や債券を買ってポートフォリオを組み、その利金・配当金や売却益から分配金を出します。REITの場合は、集めたお金で不動産物件を買い、テナント(入居者)から受け取る賃料を元に分配金を出す仕組みです。
「私募」とは公募の逆で、限られた投資家しか買えないものを指します。私募リートは原則として「適格機関投資家」しか買えません。ただし、特定金銭信託を通じることで、適格機関投資家ではない大学でも実質的に投資できます。また、私募リートと公募リートの大きな違いは、上場しているか・していないかという点です。
公募リートとの違い
| 私募リート | 公募リート(J-REIT) | |
|---|---|---|
| 上場 | 非上場 | 上場 |
| 基準価額 | 不動産鑑定評価額が基礎 | 市場価格(相場の影響を受ける) |
| 流動性 | 低い | 高い |
| 値動き | 相対的に安定 | 相対的に大きい |
私募リートの特徴
- 不動産鑑定評価額を元に基準価額が決まるため、上場リートより基準価額が下がりにくいと言われます。
- 上場しておらず流動性が低い代わりに、株式市場の値動きの影響を受けにくいです。
- 信託期間に期限の定めがないタイプもあります。
大学はどうやって私募リートを持つのか(特定金銭信託)
先ほど触れたとおり、私募リートは本来「適格機関投資家」向けの商品です。多くの大学はこの要件を満たしませんが、特定金銭信託という器を使うことで取り組めます。
ざっくりいうと、大学が信託銀行にお金を預け、「この私募リートを買って運用してください」と運用方法を指図する仕組みです。大学は信託受益権という形で保有し、実際の買い付けや管理は信託銀行が担います。決算書では、この受益権が有価証券や金銭信託、特定資産の内訳等として表示される場合があり、内訳は注記で確認することになります。同じような運用でも、大学によって科目の出し方が少しずつ違うのはこのためです。
なぜ人気になったのか
一番大きいのは、長く続いた低金利の影響で、債券だけではインカムゲイン(利息・分配などの定期収入)を取りづらくなったことです。私が担当していた頃は、私募リートで4%程度の利回りを取れる時期もありました。
金利が戻った2026年時点では、円債だけでも一定のインカムを取れるようになったため、私募リートは「債券の代替」というより分散先の一つ、という位置づけに変わっていくと筆者は見ています。2026年7月公表の国の実態調査(令和7年3月末時点)でも、学校法人609法人の運用資産に占める不動産は2.2%(2,310億円)、ヘッジファンドや不動産などのオルタナティブ資産を保有する法人は17%にとどまります(詳しくは大学の資産運用ガイドブックの解説記事をご覧ください)。
もう一つは、オルタナティブ投資の中でも仕組みが分かりやすいことです。CTAやヘッジファンド、ロングショート戦略などに比べると、「不動産を持って賃料を得る」という構造ははるかに理解しやすく、学内の意思決定の関係者からも納得を得やすいのです。
私募リートのリスク
リスクの種類は上場リートとほぼ同じです。
- 空室リスク……入居者がいなければ賃料は入らず、分配金も出せません。保有物件の立地や入居率(空室率)をよく見る必要があります。
- 災害リスク……地震や豪雨で物件に支障が出れば退去につながり、鑑定評価額が下がれば基準価額も下がります。
- 流動性リスク……保有口数が多いほど、譲渡や払い戻しに時間がかかります。一気に売られて基準価額が急落する上場リートとは、ここが異なります。
安定的なインカムゲインは魅力ですが、大学のような保守的な投資家であれば分散投資が基本です。金融機関や生損保ほど運用先や利回り確保に困っているわけではないので、オルタナティブはほどほどにとどめるのが良い、というのが個人的な考えです。資産運用の目的は「大学が資産運用を行う目的」もあわせてご覧ください。
参考:J-Money
ARESマンスリーレポート
https://j-reit.jp/download/info/873.pdf
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